君に恋焦がれる
□和音
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和音
『すこんぶおくれー』
二人の声が丁度和音になって駄菓子屋に響いた。
声はぴったりなくせに、二人は睨みあう。
「ああ、すまんね・今日はこれ一個で終わりなんだよ。どっちが買うかい?」
駄菓子屋のおばさんが若い二人を微笑ましく見る。
一方はずっとメンチをきりあっている。
「おいチャイナ。お前毎日すこんぶしゃぶってるだろ。譲れよ。」
「うるっさいネ、サディスト。元祖すこんぶに譲るのが筋ってもんアル。」
しばらく睨みあっていると思えば、ふっ、と沖田が笑った。
「・・・チャイナ。今日は俺の負けでィ。・・・今日は譲るが今度は手加減しねぇぞー。」
そういいながらなぜか駄菓子屋のテーブルに小銭を置いていく。
「おい!やってることといってることが違うネ!卑怯アル!!」
頬を膨らまして叫ぶ神楽を一瞬見て、沖田は店を出て行った。
「俺のおごりでィ。今度なんかおごれよ。5倍返しで。」
おばさんが神楽にすこんぶを渡す。
神楽は沖田の後姿を見つめる。
「・・・素直じゃないネ・・・」
夕日が彼を照らしている―