君に恋焦がれる

□窓辺の花
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窓辺の花








「おいチャイナ。アホ面さげて何見てんでィ。」

皆は部活に行き、風紀委員の俺は微妙な時間に1人で戻ってくる。

近藤さんと馬鹿土方は二人で残って仕事中。

少し薄暗くなった教室にただ1人窓の外を眺める君は俺の声に過敏に反応した。

俺より狭い肩がびくりと上に上がって、首がくるりと回って、まん丸の目が俺を捉える。

「なにアルか!入るときくらいノックしてよネ!!勝手に入ってこないでって言ったヨ!」

「・・・俺は思春期の娘の部屋に勝手に入った親父かィ。」

よくわからないボケと、よくわからないツッコミが見事に調和する。

少しの沈黙が流れて、小さなため息。

「なに見てんだ。」

あまり返事は期待していないので、自分で窓を覗いた。

グラウンドではサッカー部がボールを追い掛け回していた。

あー今日もそろそろ終わるかな。

今更行っても意味がねェ。

部活に燃えている訳でもない俺は、ぼぉ、と部活の終了時間を考えた。

「お前、部活サボってるアルか?」

右下から細い声が聞こえるので、少し目線を下げた。

その双眸は尚グラウンドを見ている。

・・・髪、綺麗だな。

今考えるようなことでもなさそうだが、頭に浮かんできてしまう。

「違ェ。今日は風紀委員があったんでィ。・・・ま、そろそろ終わるだろーけどな。」

外からは彼らの体操の掛け声が聞こえてきている。

カタン、と彼女の左隣の自分の机に座って自分の影を見つめると、少しだけ机に君の影が映っていた。

「そうか・・・」

「・・・なんだ?俺の姿が見えねーんで心配でもしてたのかィ?」

さらっと俺の言ったことに、君は大きく体を振るわせる。

「ち・違うアル!誰がお前なんか心配するか!・・・っ、心配して損したネ!早く帰れよサド!」

そう言うと、机に引っ掛けてあった鞄を引っつかんでから、そこら辺の机をずらして教室を出て行った。

彼女の机の上には、丸めがね。

それを手にとって、ぬくもりを確かめる。

「・・・心配して損したって・・・心配してんじゃねェか。」

グラウンドには、もう誰もいない。

いつもあいつはこうやって俺を見ているんだろうか。

少し嬉しいような、微妙な気持ちになった。

「素直じゃねェ・・・」

あいつも、俺も、

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