君に恋焦がれる
□フラッシュの残像
1ページ/2ページ
「あ、ジャンプ忍者。」
コンビニの袋を持った手で俺を指差した憎たらしい顔、光る銀色の髪。
奴は塀の上の俺を見上げて鼻をほじっていた。
人を指差しながら鼻ほじるって一体どういう神経だ。
全くイラついたから、俺も同じ風にしてやった。
「あ、ジャンプ侍。」
それでもって気付かれないくらい少し、靴の裏についている砂を奴の頭に振り掛ける。
このくらい許せよ侍。
・・・お前のせいで俺の痔は悪化した。
なんていうかもう痛くてしょうが無い。
血が吹き出さんばかりだ。
フラッシュの残像
「お前塀の上って・・・そんな忍者の典型みたいな生活送ってんのか。ベタだな。ベタ忍者だな。」
塀の上と道路とでで睨みあったまま、俺たちは嫌味をぶつけ合う。
「うるせェ、癖だ癖。お前は相変わらずダメ人間の典型だな。」
「なんだとお前、コレも立派な癖だ。」
何故か自慢気にニヤリとしているが、何でそれが癖なんだよ。
しかも立派じゃねぇよ。
「鼻ほじるのが癖とかお前正してくれる人がいなかったのか?!可哀想だな!!」
ったく、何でこんな奴の事好きなんだ、あいつは。
・・・アレ。
何で今俺猿飛の事思い出してんだ?
そんな俺には構わず、奴はべらべらと話し始める。
「俺には家族がいねぇ。しかし俺はそんなことにもへこたれず、鼻をほじることで自分を保って・・・」
「鼻ほじることで自我を保つってどんだけ悲しい奴だ!病院に行け!精神科に行って相談した医者にため息つかれろ!」
ツッコみながら、奴が今言ったことを考える。
家族いねェのか。
そういえば猿飛も・・・
あまり家族の話をしない女だと思ってたら、あいつには家族がいなかった。
いや、いたのかもしれないが、彼女はいないと言っていた。
あいつが目の前の憎たらしい男に惹かれているのは、もしかして、
少し、心が沈むようだった。
「猿飛。」
あ?とすっとぼけた声を出した奴。
誰でもこんな声を出したかもしれない。
「何だよ、猿飛ってさっちゃんの事か。いい体してんだけどな、性格に難がある。って言うか視力に難がある。」
いい体、か。
ふっ、と口元を歪めて笑った。
「あいつ、いい奴だぜ。学生のころからいい体してたしな。」
銀色の侍は、表情を変えて俺を見た。
「同じとこ出身か?お前とさっちゃん。」
「あぁ。忍者の学校だからな。」
その頃から好きだった、なんて奴には口が避けても言うまい。
「その頃からちょっとストーカーの気があったな。」