君に恋焦がれる

□フラッシュの残像
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「あ、ジャンプ忍者。」

コンビニの袋を持った手で俺を指差した憎たらしい顔、光る銀色の髪。

奴は塀の上の俺を見上げて鼻をほじっていた。

人を指差しながら鼻ほじるって一体どういう神経だ。

全くイラついたから、俺も同じ風にしてやった。

「あ、ジャンプ侍。」

それでもって気付かれないくらい少し、靴の裏についている砂を奴の頭に振り掛ける。

このくらい許せよ侍。


・・・お前のせいで俺の痔は悪化した。

なんていうかもう痛くてしょうが無い。

血が吹き出さんばかりだ。









フラッシュの残像










「お前塀の上って・・・そんな忍者の典型みたいな生活送ってんのか。ベタだな。ベタ忍者だな。」

塀の上と道路とでで睨みあったまま、俺たちは嫌味をぶつけ合う。

「うるせェ、癖だ癖。お前は相変わらずダメ人間の典型だな。」

「なんだとお前、コレも立派な癖だ。」

何故か自慢気にニヤリとしているが、何でそれが癖なんだよ。

しかも立派じゃねぇよ。

「鼻ほじるのが癖とかお前正してくれる人がいなかったのか?!可哀想だな!!」

ったく、何でこんな奴の事好きなんだ、あいつは。

・・・アレ。

何で今俺猿飛の事思い出してんだ?


そんな俺には構わず、奴はべらべらと話し始める。

「俺には家族がいねぇ。しかし俺はそんなことにもへこたれず、鼻をほじることで自分を保って・・・」

「鼻ほじることで自我を保つってどんだけ悲しい奴だ!病院に行け!精神科に行って相談した医者にため息つかれろ!」

ツッコみながら、奴が今言ったことを考える。

家族いねェのか。

そういえば猿飛も・・・


あまり家族の話をしない女だと思ってたら、あいつには家族がいなかった。

いや、いたのかもしれないが、彼女はいないと言っていた。


あいつが目の前の憎たらしい男に惹かれているのは、もしかして、

少し、心が沈むようだった。


「猿飛。」

あ?とすっとぼけた声を出した奴。

誰でもこんな声を出したかもしれない。

「何だよ、猿飛ってさっちゃんの事か。いい体してんだけどな、性格に難がある。って言うか視力に難がある。」

いい体、か。

ふっ、と口元を歪めて笑った。

「あいつ、いい奴だぜ。学生のころからいい体してたしな。」

銀色の侍は、表情を変えて俺を見た。

「同じとこ出身か?お前とさっちゃん。」

「あぁ。忍者の学校だからな。」

その頃から好きだった、なんて奴には口が避けても言うまい。

「その頃からちょっとストーカーの気があったな。」
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