君に恋焦がれる

□哀れな僕らの鎮魂歌
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「チャイナ、生きてるかィ?」

声をかけると、数秒の沈黙。

「・・・るっさい、生きてるヨ。お前こそ死にそうじゃないのカ?」

あー、確かに。

もう体を擦って歩くことすら出来ないから。









哀れな僕らの鎮魂歌









あたりは建物が何も見えない。

むせ返るような血の臭気と、煙が立ち込めている。

目が霞んでいるせいなのか、目の前が白んでいてあまり視界はよくない。

見えるのは荒んだ大地と、死人の血の色と、神楽の綺麗な髪色だけ。

こんなに濃い血の臭いがしている。

空気に血の赤い色が付くのではないかとさえ思うような濃い臭い。

二人とも倒れていて、動かない。

「戦争って嫌だな」

煙にまかれた空を見上げて、ポツリとつぶやく。

「今更何ヨ、お前楽しそうだったネ。・・・そんな奴の言うことじゃないアル。」

確かに、楽しかったかもな。

弱い奴を己の力で叩き潰す。

恐れの表情、逃げていく敵兵、致命傷を負っても尚逃げようとする憐れな姿。

それを追いかけて、切り裂く。

ゾクゾクして腕が震える。

俺ってホント嗜虐心に富んでるのな。

「お前だって、楽しそうだっただろィ。」

戦姫、なんて呼ばれてなかったか?

秀でた身体能力で、敵を翻弄する戦場の姫。

その姿はさながら舞い降りた神のよう―・・・

「お前、『嗜虐の王子』って敵兵に呼ばれてたヨ。」

はぁ、とため息をつく。

そんな名称、俺らには関係ない。

戦姫なんて言われたって王子なんて言われたって、

死にゆく俺らには、関係ない。

「なぁ、誰か俺らを弔ってくれると思うかィ?」

「知らないネ。誰も気付かないんじゃないカ?」

どんなに功績を挙げても、最期はこれか。

戦ほど虚しいものはない。

でも俺は、戦うことを欲した。

欲してしまった。

ろくな事ないな。

「戦争、勝ったのかな?」

細い声が、はっきり聞こえるくらいに辺りは静かで、俺ら意外に誰も生きている者は居ない。

「知らねェ。・・・勝ったら万々歳、負けたら残念、そんなもんでィ。まぁ、俺らには関係ないけどな。」

「うん。関係ないヨ。」

どんどん力が抜けていく体からは、血の匂いがしている。

神楽の綺麗な髪にも肌にも、血が飛び散っている。

肌についているものは大半自身のものだろう。

終わり、か。
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