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□非日常の日常
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*同棲設定
*木手大学生設定




はじめは戸惑ったボロアパート生活も、時が経つにつれて次第に慣れていった。
部屋に似合わないソファに座り、木手はレポートの資料に目を通す。

「えいしろうクン」
「………あ、何でしょうか」
「おっちゃんがコーヒー入れたったでー」

にかっと笑い、隣に座る恋人。
彼が依存している煙草のにおいがした。

「ふふっ、ありがとうございます」

なんだかご機嫌な彼。
学校で何かあったのだろうか。
木手は資料を机上に起き、彼の肩に体重をかけた。

「何か…良いことでもありましたか」
「明日な、遠足なん」
「遠足、どこに?」

聞いたことの無い施設名を挙げた渡邊。
木手は腿の上に置かれた彼の手に指を絡めた。

「どんな所なんですか?」
「んー?歴史館っちゅー感じやな、えいしろうクン喜びそうなとこ。芝生の広場でご飯食べるん」
「へえ……良さそうですね」

少し苦いコーヒーを口に含み、木手は笑った。
同時に、沖縄から引っ越してからまだ一度もきちんとしたデートらしきことをしていないことに気付き、同行する生徒が少し羨ましくなったがこれは飲み込む。

「暑いから熱中症、注意した方がいいですね」
「せやなぁ……館内から出たないなぁ」

ごく自然に膝を枕代わりにする彼の髪を指で梳く。
相手は気持ちよさそうに目を閉じた。

「んっ、えーこと思いついたわ」
「え?」
「3限終わったらこっち来ぃ。おっちゃんご飯食わんから館内でデートや。レポートの資料もぎょーさんあるで」

突発的過ぎて言葉を失った。

「だめでしょ、オサムさんは仕事で行くんですから」
「かまへんかまへん。偶然やもん、な?終わったらメール寄越し、待っとるから」
「でも…」

こうなったら向こうも後には引かない。
ため息をついてこちらが折れた。

「…仕方ないですね、あなたは」
「そないこと言うて、嬉しいくせに」
「………ふっ」

あまりのどや顔に吹き出すと、向こうもくすくす笑った。

「なんやねん、急に吹き出して。…っ」

扇風機の風が直で当たったのか彼はぎゅっと目を閉じる。
自然に払われた長い前髪から現れた睫毛を見つめていると目があってしまった。

「あっ」
「……今絶対キスしようと思っとったな」
「思いません、オサムさんじゃないんですから」

なんだか心の奥を見透かされたような気がして、つい即答する。

「くっくっ…ダウトやな」
「違い、ます」
「ほんならこない真っ赤になる必要無いやろ、えいしろうクンはほんま林檎やなぁ、うおっ!」

自分に恥ずかしくなって、いきなり立ち上がると盛大に転がり落ちる彼。
残りのコーヒーをすべて飲み干し、流しに奥と、ふらふらと起き上がる彼が横目に見えた。

「いった……」
「仕返しです、俺はもう寝ますから、カップ洗っておいてくださいね」
「んー…」

後頭部をさすりながら答える渡邊。
急いで歯を磨き、ベッドに潜る。
カフェインのせいか、それとも明日の予定のせいか。
なかなか重くならないまぶたをギュッと閉じながら、木手はベッドがより狭くなるその瞬間を待っていた。






☆。+゜

Twitterで仲良くさせていただいているオズさんからのリクエストでした。
エセ関西弁ですみません、ほんと(^p^)
リクエストありがとうございました!

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