短編
□悪魔と契約
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華「…さぁ…紅音。沢山食べなさい(ニコッ)」
目の前に広がるのは御馳走の数々。此処に来てから満足な食事も与えられなかった僕にとっては夢のようだった。
紅「本当に食べていいの?これ、全部…」
華「えぇ。今までごめんなさいね…むしゃくしゃして貴方に当たっていただけなの。許してちょうだい」
優しく頭を撫でられた僕は華鈴お義姉ちゃんの笑顔の裏にある策を疑う事はなかった。ただ、もう殴られる事はない…痛い思いはしなくていい…その事を考えると心が躍るようだった。
紅「い…いただきます!」
ナイフとフォークを手にした僕は無我夢中で御馳走を食べていた。毒とか仕込まれて居るかも知れないという疑いすら抱かずに、ただ空腹を満たしていた。
とても美味しかった…
とても…美味しかった…
僕の身体に異変が起きるまでは
紅「ッ…あ゛ぁ゛…」
身体が酷く熱い…
痛くて痛くて痛くて
涙が止まらない…
紅「ゲホッ…うぇ…ッ…」
口の中いっぱいに
鉄の味が広がる…
真っ赤な血が床の上に広がる…
此処で初めて気付いた
"毒"を盛られたのだと
腸を真っ赤に焼いた鉄で掻き回されるような痛さ…
一度だけではなく
何度も何度も血を吐き続けた
華鈴お義姉ちゃんが
椅子に座りながら僕を見て笑っている
華「…貴方が生まれてから亜季斗は貴方ばかり構っているの。貴方さえ生まれて来なければ亜季斗はずっと…私だけを見ていてくれたのに!!」
あぁ…やっぱり僕は生まれてはいけない子だったんだ…
パパも…ママも…
にーにも…華鈴お義姉ちゃんも…
僕さえ生まれなければ
幸せになれた…
心臓の鼓動が弱くなるのが分かる…
邪魔者とわかった僕は死ぬ事を自覚した今…すごく幸せだった…
僕は静かに目を閉じた…
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