短編
□悪魔と契約
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ジャラ…ガチャ…
金属同士がぶつかる音がする。鼻には薬独特の匂いがつき、身体は酷く疲れていて目を開けるのでさえ嫌だった。
紅「(此処は…そっか…僕、捕まったんだっけ…)」
此処に来て一ヶ月…僕はずっと牢屋の中に閉じ込められていた。足には足枷が付いており、唯一光りの入る窓は僕の身長より遥かに高い位置にあり逃げる事も出来ない。
紅「(これから…どうなるのかな…お腹空いたし考えるのですら面倒臭い…)」
此処は世界的企業である姫宮グループの施設の中。製薬関係に力を入れているとパパに聞いた事がある。つまり此処は薬の研究施設。しかも…違法の…。
子1「あ"ああぁあ!!!??」
子2「熱いぃい!!…ぁ…誰か…だすげ…」
紅「っ…!」
僕は思わず耳を塞いだ。毎日毎日朝昼晩構わず…僕と同い年くらいの子が実験体になっている。多くは薬に耐え切れず命を落とし…例え生き残ったとしても身体に障害が残った。
紅「にーに…」
耳を塞いだとしても聞こえてくる悲鳴…断末魔。いつ自分の番になるか…考えるだけで怖くて恐ろしかった…にーにがきっと助けてくれる…心の隅で根拠のない希望だけを抱いて僕は生きていた。
紅「グスッ…会いたいよ…会いたい…にーに…ッ…う…」
泣いても現実は変わる事なく、ただ淡々と日々過ぎていく。僕はいつまでたっても殺される事なくまるで生き地獄の様だった。此処にずっといる位なら殺される方がマシだが…それすらしてくれる気はないらしい。
紅「…闇神に生まれて来なければこんな思いもしなくて済んだのかな…」
いつしかそんな考えも芽生えた頃、僕はにーにの婚約者である華鈴お姉ちゃんと食事をすることになった。何でもにーにと久しぶりに会えるらしい。僕は嬉しさで胸がいっぱいになった。
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