Novel

□なぁ、
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「「なぁ」」

今は昼休み、白石と忍足は部室で昼食をとっていた。
二人同時に口を開き、同時に口をつぐむ。

「…先良えよ、謙也」
「…おおきに」

白石が促すと忍足が話し出す。

「白石、自分千歳と付き合っとるよな?」
「おう」
「…ヤるときは下?」
「おう…って何言わすねんアホ!!」
「…やって……」

そこで忍足が机に突っ伏す。あーだのうーだの言って顔を上げない。

「謙也」

呼びかけたらようやく顔を上げた。
悩み事があるのか。
いや大体分かるのだが。
そう思いながら白石は忍足の言葉を待つ。

「…この前、光ん家に行って来たんや」
「ん」
「んで、二人で光の部屋でゲームして」
「ん」
「何かいつの間にか良え雰囲気になっとって」
「…ん」
「二人して黙っとったら光が誘ってきたんや」
「……………ん」
「それはめっちゃ嬉しかったんやけど、体格的に光が下になるやんか」
「……………せやなぁ」
「俺、光に痛い思いさせんの嫌やねん。なぁ、ホンマに痛い?」
「…………………」

返答に困る質問をされ、白石が考えこむ。

確かに痛い。
受け入れる瞬間も、翌日の腰の痛みも。
けど、後からくる快楽は痛みなど感じさせなくなるし何よりも…。

「痛いけど、大切な人と繋がれたっちゅう喜びでそんなもん苦にならん」

白石が正直に言うと忍足が驚いたように見つめる。

「…ホンマ?」
「ホンマ」
「痛いけど痛ない?」
「……まぁな」

それを聞いて忍足は破顔した。

「そっかー、おおきに白石!」

訊かれたのはものすごく恥ずかしいことだったが、親友の力になれたならいっか、と白石は思う。

昼休み終了のチャイムが鳴り、二人は部室を後にした。


翌日、何やらいつもと違う雰囲気の忍足と財前に会った。

「白石ー、光が口きいてくれへん…」
「部長、腰痛いんで見学しますから」
「…さよか」

言葉はピリピリしててもいつもより棘のない財前と、謝りながら幸せオーラを出している忍足。
何があったかなんて聞かなくても分かる。

「…良かったな」

白石は二人の背中を穏やかに見つめた。






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