〜太陽の輝き〜前世編
□第1話
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サニン達がキングとクイーンの部屋についた。
その部屋はやはり王族が住む宮殿だけあってとても広く、高級品が数多く置いてある。
一般の者なら普通は入れない部屋であり、入ったところで部屋の雰囲気に圧倒されることだろう。
しかし慣れてしまったサニンとリゲルとベガはなんともないような表情で足を進める。
レッドカーペットの上を歩いてキングとクイーンが座る王座へと向かう三人の脇には、数多くのメイド達が頭を下げている。
王座の前に来たところで後ろのリゲルとベガはキングとクイーンに跪いた。
『パパ、ママ、大事な話ってなあに?』
「うぬ。サニン、お前留学してみないか?」
太陽のキングとクイーンはとても強くありながら優しい輝きを持っている。
娘の問にキングは柔らかい表情で微笑むと、がっしりとした手でサニンの頭を撫でながらそう話す。
『留学?』
「ええ、そうです。実はキンモク星という星に私の古い友人がおりましてね。太陽のプリンセスとしてあなたに他の星のことを学んできてほしいのです。」
どうですか?と尋ねたクイーンにサニンは目を輝かせた。
『うわー!行ってみたいわママ!その星行きたい!』
するとクイーンはにこりと微笑んで言う。
「そう言うと思っていましたよサニン。ですので今すぐ行きなさい。」
『・・・は!?今すぐ!?』
どうやらクイーンは既に留学の手続きをしていたらしい。
今すぐ行け、という言葉に驚きサニンは素っ頓狂な声をあげた。
そのサニンの反応にクイーンは面白そうにクスクスと笑う。
クイーンといえど、その表情はまるで無邪気に笑う少女のようだ。
サニンの無邪気さもこのクイーンゆずり、と言われたら納得できるものだろう。
その様子に隣のキングは苦笑している。
「ええ、今すぐ。そして、留学にはリゲルとベガも行ってきてください。」
クイーンはサニンの後ろにいるリゲルとベガを見つめてそう言った。
『うわーーい!リゲルとベガも一緒なのね!やったぁあああ!』
サニンは喜び、リゲルとベガにハイタッチをしぴょんぴょんと跳ね回る。
「良かったなサニン。では三人とも、すぐに準備をして行きなさい。」
『「「はい!!」」』
―――――
部屋で荷造りを終えたサニンは、立ち上がってふと思いついたことがあった。
(そういえば・・・セレニティや内部太陽系戦士たちのみんな、外部のみんなにも会えなくなるのか・・・)
そう。留学するということは即ち、しばらく仲間に会えなくなるということ。
そして心残りなのが自分と仲の良い彼女のこと。
とても優しくて、泣き虫な彼女は自分としばらく会えなくなると聞くと悲しむのではないだろうか。
(いけない、いけないっ・・・!)
ふと思考が暗くなったのに気づいたサニンは頭を振ってその思考を紛らわす。
「サニン・・・」
ふと自分の足元で聞こえた声に下を見ると、そこにはオレンジ色の毛並みをした猫が一匹。
『大丈夫よ。』
毛並みの良いそれを撫でると、サニンは淡く笑ってから呟く。
『じゃあ、行って来るわね。』
ぱたん、と閉まったドア。
その部屋に残された猫はしばらくドアを見つめていた。
―――――
それから月へと着く。
太陽とは違った幻想的な美しさを持つ月。
サニンは辺りをキョロキョロと見渡すと、前方に人影を見つけた。
(あ・・・!)
月を思わせるような長い金髪。
リゲルのとは違ったそれを見て、目的の人物だと認識したサニンは駆け出す。
『セーレーニーティーーー!!』
「どぅわぁっ!!」
びたん!
その音を最後に一瞬周りが静かになる。
「だああ〜」
最初に復活したのは金髪の少女のほうだ。
「一体なに・・・あ!サニンちゃん!」
その少女は体当たりをしてきた人物を見ると頬を綻ばせた。
『えへへっ!昨日ぶり!セレニティ!』
セレニティ、と呼ばれたこの少女は月のプリンセス・セレニティ。
ちなみにサニンとセレニティは従姉妹同士である。
「・・・サニンちゃん?どうしたの?なんかいつもより元気がないわ?」
星が違うといえど昔から一緒にいたため、お互いのことはよく分かっているのだ。
そのためセレニティはいつもと様子の違うサニンに気づいた。
サニンは少し驚きつつも苦笑して答える。
『うん・・・実は・・・留学することになったの。』
「え!?留学!?いつなの!?」
『・・・・・今すぐ。』
「!そんな・・・」
サニンからのその言葉を聞くとセレニティの海色の瞳が揺れた。
そして俯いてしまったセレニティを見たサニンは、にこりと微笑むと自分より少し背の高い彼女の頭を撫でた。
そして諭すように優しく話す。
『大丈夫よ、一生会えなくなるわけではないんだもの。帰ってきたらすぐに会えるわ。だから、そんな顔しないで?』
その言葉を聞いたセレニティは顔を上げる。
かちりとオレンジと海色が交じり合う。
サニンのオレンジがかった瞳はとても優しい色で自分を見つめていた。
それを見たセレニティは寂しさで僅かに零れかけた滴をぐい、と拭う。
「うん・・・そうね!あ、今すぐ行くのよね?じゃああたし、みんなを呼んでくるわ!」
『ええ、』
サニンと離れるのはとても寂しい。
しかしそれでも精一杯の強がりを見せ、駆けていったセレニティの後姿を見てサニンは次に出かけた言葉を飲み込む。
(強がってんのは、あたしのほうよ・・・)
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