〜太陽の輝き〜前世編

□第1話 
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セレニティがみんなを呼びに行っている間、荷造りを終えたリゲルとベガもサニンの元へときた。


その表情は少し寂しそうに見える。


「寂しくなるな・・・」


そう言ってサニンを抱きしめるウラヌス。


彼女の瞳もまた、サニンとしばらく会えなくなることの寂しさを物語っていた。


「ほらウラヌス。そんなに抱きしめていては送り出せなくなるわよ。」


ネプチューンに宥められウラヌスは名残惜しそうにサニンを離した。


『大丈夫よ!それに帰ってきたらまたあたしと稽古して頂戴ねウラヌス!!』


「ふっ・・・やれやれ。困ったお姫様だな。」


相変わらずのお転婆な様子のサニンにウラヌスは苦笑しつつも、優しい瞳で見つめていた。


そしてその“フリ”をしていたサニンは、ウラヌスに見えないところで僅かに寂しさを帯びた表情をしていた。


『ネプチューン・・・』


「でも・・・本当に寂しくなるわね・・・」


ネプチューンは悲しそうな顔をすると、サニンを抱きしめた。


ふわりと薫るネプチューンの誇り高い花のような香りに、サニンは懐かしさを覚える。


『ええ・・・あたしもよ。ねぇ、帰ってきたらあたし、ネプチューンの淹れる美味しいお茶が飲みたいわ。』


「ええ・・・何杯でも淹れてあげるわ。」


ずっと、彼女の淹れるお茶が好きだった。


とても安らいだ気持ちになり、さすが抱擁の戦士、と言うべきなのかほっとするような、優しい味がするのだ。


それがサニンは好きだった。


サニンはネプチューンから離れると、次にサターンに向き合う。


自分より背の低い彼女は内部、外部太陽系戦士の中で一番若い。


しかし幼いながらに重い運命を背負っていることをサニンは知っていた。


妹のように想ってきた彼女をサニンは目を細めて見つめる。


「サニンちゃぁぁん!!」


サターンは泣きながらサニンに抱きつくと、サニンもギュッとサターンを抱きしめた。


『ほらほらサターン。そんなに泣かないの。一生会えなくなるわけじゃないのよ?』


彼女の頭を優しくぽんぽんと撫でて諭すサニンは願わずにはいられなかった。


(どうか・・・サターンの背負っている運命を変えることができたら・・・)


「うん・・・私、待ってるからね!サニンちゃんが帰ってくるの待ってるから!そしたらまた一緒に遊ぼうね!!」


『ええもちろん!今度は負けないわよトランプ!!』


お互い微笑みあって離れる。


(サターン、どうか幸せになってほしい・・・)


そう願いながら次にサニンはプルートへと向き合う。


『プルート!あたしあの本の続きまだ読んでないのよ!だから帰ってきたらまた貸してよね!』


「ええ、もちろんです。・・・ですから、必ず帰ってきてくださいね。」


これもサニンの強がりだろうか。


それを分かっているのかプルートは、淡く笑いつつも切ない表情でサニンを見つめる。


そんな顔しないで、と言うサニンもまた、同じように切ない表情をしていたのはプルートしか知らない。


しばらく二人は抱きしめ合った後に離れると、お互いふわりと微笑んだ。


「サニン様、留学をしてきたら私に色々お話してくださいね。」


「気をつけて行って下さいね!迷子になったりしないように!笑」


「お体にお気をつけて!」


「リゲルとベガも頼んだわよ!」


マーキュリー、ジュピター、マーズ、ヴィーナスの順にサニン達三人に別れの挨拶をする。


それに答えるのは先ほどまで寂しそうな表情をしていた二人。


とっさに笑みを顔に貼り付ける。


「もちろんよ!私たちがついているから大丈夫よ!」


「ええ、任せてださい。」


そう言って笑ったものの、ぎこちない笑みになっているのは内部戦士達には気づかれていた。


それもそのはず、内部戦士達も明るく振舞ったものの“振舞った”に過ぎないから。


『うん!じゃああたしたち行くわね!セレニティ!クイーンによろしくね!みんな、またね!』


そう言ってサニンとリゲルとベガは寂しさを残し月を飛び立っていった。


『さよなら』ではなく、『またね』と言って。
 

また会えることを信じていたのだ。


しかしこのときはまだ誰も予想していなかったのだ。


この12人が今生ではもう二度と会えないということを―――・・・






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