My treasure

□そして微笑う
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昼過ぎのオリオン。


その最奥の執務室で、ふとフレイは顔を上げた。


それに傍らのホメロスが気遣わしげな声をかける。


「王子、どうかなさいましたかな?」


「いや…なんだか王宮が騒がしいようだ」


「?そうでしょうか…」


ホメロスの耳には届かないようで、首を傾げた。


しかしフレイはため息をつくと、重要書類を執務机の中に片付ける。


そうして紅茶のカップを持ち上げて席を立つ。


「…来た」


「え」


振り返ったホメロスの目の前に何かが雪崩れ込んできた。


「フレイーっ!来たよー!」


「コラ、待ちなさいよ!サニン!」


「お邪魔致しますっ」


「ぬおおおおっ!?」


どたばたどたん!


最後にガン!と余りよろしくなさそうな音を立てて、騒ぎは一段落する。


下敷きになったホメロスを憐れに思いながら、フレイは苦笑いを浮かべた。


「…で?今日はどうしたんだ、サニンにリゲル、ベガ」


そして微笑う



「いやー、ひっさしぶりだよね!元気だった!?」


場所は変わってフレイの応接室。


革張りのソファに腰掛けながら、サニンは嬉しそうに笑った。


間髪いれずにその頭に傍らのリゲルが手刀を落とす。



「よく言うわ。あんた、おとといも勝手に行ってたくせに」


「え、そうだっけ?」


リゲルの灰色の瞳は無言で肯定の意を示している。


ベガはそんな二人にはお構い無しに(!)紅茶とケーキを楽しんでいた。


「で、今日はどうしたんだ?」


フレイはそんな妹分たちを優しい目で見つめる。


ぎゃあぎゃあと口論する(というかリゲルが叱っている)二人に代わって、ベガが口を開いた。


「さあ…急にサニンがフレイ王子に会いにいきたいと言い出しましたから」


よくわかりませんわ、というベガはふわふわする微笑みを浮かべた。


その要領を得ない発言にフレイががっくりしたのは言うまでもない。








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