小ネタSS

□籠のトリ
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僕は空になんか憧れない。
自由になりたいなんて思わない。
籠のナカに居るのが僕の幸せ。

「おはよー。今日も変わらず無表情だな」

そうかもしれない。僕には貴方に向ける表情が分からないんだ。

「関係ない」
「・・・お前、挨拶くらい返せって」

苦笑いを向けてくる貴方。
僕もそんな表情を見せればいいのか?

「たっく、話し掛けてもこれじゃーな」
「頼んでない」


この世で唯一僕に話し掛けてくる貴方。
なのに僕は表情を返さないんだ。
分からないから。


僕は貴方に飼われたい。
貴方という籠のナカの世界。
その世界以外は色を持たないから。
貴方に飼われられるのならば、僕は何も望まない。

「はいはい。もういいから、ちゃっちゃと学校行こうぜ!」

貴方という籠。
僕を捕らえて放さない籠。

罪だな。
貴方は無意識に僕を閉じ込める。
貴方は僕へと知らずに幸福を齎している。


僕は鳥でいい。
大空を羽ばたく鳥じゃない。
籠のナカで一生生きていく。
そんな鳥でいい。
そんな鳥がいい。



End


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