小ネタSS

□向日葵
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花は太陽へ向く
種は小動物に食べられる
茎は水を吸い上げ、葉は光合成をする
花言葉は「私はあなただけを見つめる」


――――――

「俺を見てないだろ、お前。もう疲れた」

またフラれた。
どうでもいい奴に。
告られたから付き合った。
唇を重ね、体を重ね。
気持ちなんてもんは無くてもいい。
無くったってキモチイイ。

あいつに、全てを奪われた。
あの向日葵に。

「また会いましたね」
「前にも会ったか?」



一年前の夏。
ふと何も考えず訪れた向日葵畑。
そこに佇む一人の青年。
その青年は儚げにただ向日葵を見ていた。
見惚れた。
ただただ俺にはあいつしか見えなかった。
黄色く輝く向日葵でさえ色を失ったようだった。

『あなたも向日葵、好きなんですか?』
『別に……』
『そうですか。僕は好きなんです』

そう言いながら微笑んだ青年。

『また来年、綺麗に咲く向日葵を誰かと見れたら幸せです』





「一年前の今日、ここでお会いしませんでしたか?」

忘れる事なんか出来ない。
あの日から誰と居ても、誰を抱いても、あんたの顔がちらつく。

「っ!?お、覚えてない」

嘘を吐いた。
あんたの隣に優しく微笑む男が居たから。

「そうですか。すみません、余りにも似ていたので」
「気にしてない」


―――――――

「ねぇ、あんた俺と付き合わない?」

あの夏を境に俺は前にも増して誰とも分からない男に声を掛けるようになった。
心であいつを見詰めながら。


End


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