○愛の漢字劇場9[因果応報(インガオウホウ)]
ルウ「あれ〜、おっかしいなあ?」
アスカ「どうしたの、ルウ?冷蔵庫の中をそんなに見つめて。なんか変なものでもあるの?」
ルウ「違うわよ〜。その逆で、無いのよ。とっておいたケーキが無くなってるの」
アスカ「ケーキ?」
ルウ「そう、ケーキ」
アスカは一瞬目を見開く。
しかし、穏やか落ち着いた声でルウに告げた。
アスカ「…………それは、諦めるしかないかも」
ルウ「え〜っ!」
アスカ「早い者勝ちってね」
ルウ「そんなあ…横暴よぉ!納得できないわ〜」
アスカ「まあ、食べたのが誰なのかさえ分からないんだし、諦めが肝心」
ルウ「本当に食べられちゃったのかな……?」
アスカ「その可能性は高いんじゃないかな?」
ほら、この家の中には仲間があ大勢いるから。
アスカの言葉を聞いて、ルウの顔が真っ青になっていく。
アスカ「……ルウ?」
ルウ「食べられちゃったのは仕方がないもの…食べた人は許さないけど諦めるわ。だけど…」
アスカ「だけど?」
ルウ「ケーキ…食べたのなら、その人大丈夫かしら?」
アスカ「…………え?」
ルウ「ギブソンさんから貰って、とっておいたんだけど…色々あって忘れちゃってて…かなりの日数経ってると思うんだけど…」
アスカ「もしかして…傷んでたかも、ってこと?」
ルウ「うん…食べた人、お腹大丈夫かしら。食べる前に気がついて捨てていればいいんだけど…」
アスカ「…………」
アスカの顔から血の気が引いていく。
ルウ「あれ…アスカ?」
アスカ「…………」
ルウ「顔が真っ青だけど…大丈夫?」
アスカ「ケーキって…イチゴと生クリームが…たっぷりの…ケーキ…よね…」
ルウ「そうよ。でも、どうしてアスカがケーキの種類を…と、いう事はもしかして、アスカ!?」
アスカ「ごめんなさーいっ!!」
アスカは、今持っている最大の力を使い、トイレに走って行った。
20分後。
お腹を押さえながら、トイレから出て来るアスカ。
アスカ「ふい〜っ…」
ルウ「ア〜ス〜カっ!!」
アスカ「ル…ルウ…」
ルウ「もうっ!傷んでたとは言っても、人のものを勝手に食べちゃうなんて!」
アスカ「ゴ…ゴメン」
ルウ「お腹壊しちゃったのも因果応報なんだからっ!」
アスカ「はい…えっと…因は原因を表し、果は結果や報いを表す…良い行いをすれば良い報いが返って来るけど、悪い行いをすれば悪い報いが返って来るってこと、よね?」
ルウ「そうゆうことよっ!」
アスカ「その通りでございます…うっ!!」
ルウ「ア…アスカ?」
アスカは、再びトイレに戻っていった。
ルウ「ふう…次にルウのケーキ食べたら承知しないんだからね!」
ドア越しに、ルウはアスカに忠告する。
ルウの怒りに比例するように、しばらくアスカは腹痛に悩まされることになった。
アスカ「他人様のモノを…取るなんて悪いことは…したら…ダメ…だね…」
トイレの中で、アスカはうなされる様につぶやいていたのだった。