*CLAP*
□ラベンダー
1ページ/1ページ
【ラベンダー】
「先輩、まだかな…」
広い部屋は1人でいるととても寂しい・・
静かな部屋に響くのは刻々と過ぎる秒針の音だけ
「大学・・大変なんだろうな」
赤いリボンのついた大事な鍵を握り締めて
外が赤く染まるのを見つめていた
コップに入っていたミルクティーも
すっかり空っぽだった
「先輩…退屈だよ」
頬をテーブルに預けると紫色の花が視界に触れた
「奇麗…」
ラベンダー 唯一先輩の部屋に置かれているお花
辺りはすっかり薄暗くなってしまった
「先輩遅いね…」
ラベンダーの香りが奈々(ナナ)の花をくすぐる
花の香りに奈々の瞼がゆっくりと閉じていった
しばらくして時計の音とともに
規則正しい寝息が聞こえてきた
――――
――ガチャ
[ただいま〜…奈々?]
外が暗くなってから彼は帰ってきた
[奈々?…寝てるのか]
テーブルに突っ伏して寝ている奈々に微かに頬を緩ませた
規則正しい吐息が静かに響く
[・・ごめんな]
奈々の隣に静かに座る
「ん〜・・せん…ぱい」
[奈々?]
「……」
瞳は閉じたままでまた寝息が聞こえてきた
[寝言か…]
[俺の夢見てんの?]
奈々の寝顔に自然と顔が綻ぶ
「ゆう・・きさん」
[…!]
「おかえり…なさ・・い」
奈々から寝言が紡がれる
[…それ反則]
祐樹は自分の頬が染まっていくのを感じながら
奈々の髪を掻き揚げると
白い頬にそっとキスをした
「んん・・?」
もぞもぞと動く奈々を見つめた
「…先・輩?」
眠い目を擦ると祐樹の姿が瞳に映った
「あ・・おかえりなさい」
寝ぼけ眼(マナコ)のまま小さく笑った
[ただいま]
ニッコリ笑って両手を広げると奈々が奇麗に腕におさまった
祐樹の胸に顔を埋めぐりぐりと顔を押し付ける
[奈々?]
呼びかけても反応しない奈々に困ったように笑った
[・・寂しかったの?]
そう尋ねると奈々は少し顔を離した
「…ずっと待ってたんだよ」
[うん、ごめんな]
祐樹は髪を優しく指に絡ませた
「私も・・この花も」
そう言って指差したのは
テーブルの上にたたずむラベンダー
[あぁそうだな・・ごめんな]
頭を撫でると小さく頷いた
[さっきなんの夢見てたの?]
「え?さぁ・・覚えてないよ」
奈々は小首を傾げた
[寝言…俺に直接言ってほしいな]
「私!な、何て言ったの?!」
[俺のことゆうきさんって言ってた]
「あ……」
その言葉を耳にした奈々は
みるみるうちに赤く染まっていった
[ねぇ言ってほしいな]
「い、言えない」
腕に収まったままの奈々がぷるぷると首を振る
[夢の中の俺じゃなくて俺に言ってよ]
ね?と顔を覗き込む祐樹に奈々は息を飲んだ
「ゆ、祐樹・・さん…?」
[なあに奈々?]
胸が苦しくなった
祐樹さんがとても穏やかな顔をしてたから
真っ赤な顔を両手で隠すと
祐樹さんが抱きしめてくれた
「(帰ってきてくれた)おかえり・・おかえりなさい,祐樹さん」
存在を確かめるように背中に腕を回す
[ただいま奈々]
ふわりと淡く触れた唇はとても優しくて…
[またミルクティー飲んでたな]
「甘いでしょ」
ラベンダーの香りが漂うなかで笑いあった
――あなたを待っています――