*LOVE+STORY*

馬鹿はどっちだ
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「ねぇねぇ、ゆきちゃんっノート見・せ・て♪」

終礼が鳴り午後の休み時間

だんっと机に勢いよく頬杖をついてそう言う彼女の名は桑原 麻耶

女らしさも可愛さも欠けるが、女子高生だ

「お前…言い方と態度が全然違うんだけど。また寝てたんだろ」

「だーってこんな寝心地のいい席で寝るなって方が無理でしょーよ」

そういって自分の席をバンバンと叩く麻耶

彼女の席は日当たり抜群の窓際後ろから二番目の席

「…その後ろに座る俺は寝てませんが?」

呆れるようにそう言い返す彼は前原 幸

「っもういいから貸してっつってるでしょ」

「へーえ、人にもの頼むときそう言うんだ?桑原さんは」

「幸様のノートを写させてください、お願いします」

「気持ち悪い」

言葉と共に麻耶の頭をぱこんとノートで叩く

「なっあんたが言えっつったんでしょ!」

「そんな風に言えとか言ってねぇよ、虫酸が走ったわ」

「っあんたねぇ〜」

「麻耶、俺コーヒーね」

紙パックのと言いながらノートを渡すと幸は机に突っ伏した

「はぁそんなん自分で…」

「へぇー、じゃあノートは要らないか。自分で何とかすんだよなー」

「っ、この性悪め…わかった、買ってくればいいんでしょ」

「最初からそう言えばいんだよ」

肘をついてにやりと笑う幸に麻耶は睨みをきかせながら渋々教室を出た

「幸ってばまた麻耶をパシりに使ってんのか?」

食堂にでも行こうとしているのだろう級友たちの1人が幸に声を掛けた

その瞬間幸の表情が曇る

「佐々木…お前またわざと呼び捨てにしたろ」

「なんだよ、前原だって桑原呼び捨てにしてんだろ?俺らクラスメイトなんだし、なぁ?」

面白がっているように笑う彼とは対照に幸は不満げだ

「俺と麻耶は何年の付き合いだと思ってんだ、たかが級友の分際で…」

埋められたいかと凄む幸を見ると彼はころりと態度を変え楽しげに笑った

「嘘だよ、いつもの冗談だろ!
ったく、桑原のことになったらいつもこれだなお前」

「うるさい、放っとけ」

「桑原も一緒にいてなんでわかんないかねー」

佐々木の口からまたいつもの言葉が零れる

「佐々木、いつも言うようだが余計なことはするなよ」

じろりと睨む幸に対しはははと笑う佐々木

「わかってるって。んな野暮なことしねぇよ!」

「わかってんなら毎回同じ事言わせんな」

笑いながら教室を出ていこうとする集団を幸は気だるそうにしっしっと手で追い払う

幸と麻耶は幼い頃からの幼馴染だ

家が隣で家族も仲が良いせいか普段からいつも一緒

家族同然のような存在だった

やっと静かになった教室で幸は麻耶が帰ってくるまでの間に購買で買ったパンを頬張る

「あぁー!ゆーきー?!」

急に名前を呼ばれ扉の方を見ると膨れっ面の麻耶がずんずんと肩を揺らして歩いてくる

「何?」

「なに…だと?
人におつかい行かせといて何1人で勝手にお昼してんのよ!」

「だって腹減ったし」

「あーのーねー見なさいあれを!」

そう言い黒板を指差す麻耶

「私は今日日直なわけ!
授業の準備とか忙しいってのに、あんたのおつかい行って帰ってきたら先に食べてるとか信じら、んむっ…!?」

幸は麻耶の口に一口かじったパンを向けた

「はいはい、寂しかったのはわかったからちょっと黙って」

「はぁ?どう聞いたらそんな解釈になんの、あんたの頭はどうなってんだ」

「だから…」

「まぁたお前ら痴話喧嘩かー?」

早速周りにいた1人から野次がとぶ

また来たと言わんばかりに幸は心底面倒くさそうに顔をしかめる

「はぁ、何言ってんの。これが旦那じゃ私人格おかしくなるでしょ」

何でもない風に答える麻耶を幸は黙って見守る

「これで付き合ってないんだからなーお前ら」

「それ、ありえないから」

麻耶の反抗に聞く耳持たず彼らは笑いながらまた何処かへ行ってしまった

「お前なー…」

「何よ?」

幸の呆れた声に麻耶はつんとした顔で振り返る

「毎度毎度そんなでかい声でつっかかってきやがって。だから黙れって言っただろ」

「幸が意味不明なこと言うからじゃん、別に周りには言わせときゃいい」

気にしないしと突っぱねる彼女にまたため息をつく

「……俺が毎回傷つくっての」

幸の小さな声が零れる

「え?何?」

「…何も。ほら飯食う時間なくなるぞ」

「だからそれは幸がっ…んもがっ」

「はいはいもう十分だから食え」

もがもがと口を塞がれた麻耶を他所に幸は麻耶が握りしめていたコーヒーを取り上げ別のパンを食べ始める

「こっの野郎〜…」

「麻耶」

眉を歪める麻耶の両頬を幸が両手で包んだ

「っ何…」
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