*LOVE+STORY*

馬鹿はどっちだ
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「そんな顔してると男が逃げるぞ」

至近距離で真顔でそういう幸を見て、近くの女子が小さな悲鳴をあげる

「……」

幸は密かに女子から人気がある

勉強もスポーツもこなし、顔も整った彼に想いを寄せる女子は少なくない

(こんな不愛想で意地悪なこいつのどこが…)

麻耶は周りの女子の反応に不満げに口を尖らせる

「…言わせて貰いますけど。
私に男が寄り付かないと言うならそれはあんたのせいだ!」

「えー、何で俺…」

至近距離の幸の顔が呆れたように眉を下げる

「あんたがこんなことするから皆が勘違いして寄ってこないの!
おまけに女子からは反感食らって女友達も少ないんだから!」

そう言い自分の顔を挟む幸の手を外しにかかるが、悔しいことにぴくりとも動かない

「知るかんなこと。俺は俺の自由にやってんの」

包んでいた麻耶の両頬を思いきり横につまむ

「俺じゃなくてこの顔だよこれ、しかめっ面ばっかりで…もっと笑ってれば友達できるぞ」

楽しそうに笑う幸がなんて憎らしいか…

周りの女子は幸が見せる珍しい笑顔に浮き足立っている

「いっー!いひゃいっへば‼」

顔を歪まされ痛みで余計に顔をしかめる麻耶

「ぷっ、変な顔。」

しもぶくれのようになったその顔にまた笑いながら幸が手を離した

「あーんーたーねー…」

怒りがふつふつと湧いてきていた麻耶に予礼のチャイムの音が聞こえた

途端にがくりと肩を落とし眼だけは幸を睨み続ける麻耶

「ほーら幸のせいで食べる暇がなくなったじゃないか…どうしてくれる…」

「ちょっと…ガチで怖いんですけど麻耶さん」

「せっかくのお昼が…」

怒ってんだか落ち込んでんだかよく分からない顔で俯く麻耶に幸はおかしそうに笑う

「ほら、そんな可愛そうな麻耶にパンをやろう」

そう言い残りのパンを渡すと麻耶はきょとんとした顔で幸を見上げる

「はい?」

「俺がお詫びに黒板消しといてやるから麻耶は食べてな」

「えっいーの‼
なぁんだ、たまには良いとこあるじゃん」

急に態度が一変、ぱぁっと明るくなる麻耶の顔にまた幸の意地悪心が顔を出す

「お前じゃ上、届かないしな」

嫌みったらしくいうとまた麻耶の顔が変わる

「っ、一言多いっ‼」

すれ違いざまにそう言う幸にカチンとくる麻耶だったがふっと肩の力が抜けた

何だかんだいっても優しいのが幸だ

いつまでもイライラしてる自分がバカらしくなる

ふっと笑うと麻耶はもらったパンにかじりついた
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