あんけーとっ!2

□寂しい
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〜千鶴side〜





寂しい。
今の気持ちを一言で表すのならその言葉が一番当てはまる。
…それに、ゆずはがいなくなってからというもの幹部の皆の仲があんまり良くない。何処となくピリピリしていて、気まずい空気が流れている。


「…ゆずはのばか…。どこに行っちゃったの?」


見上げた月が溜まった涙で形を変える。ゆらゆらと揺れ、星は見えなくなる。
とんとんとん、と床を踏み近づいて来る足音に慌てて零れそうになった涙を両手でぬぐう。


「泣いていたのか…?」

「い、いえ。」


足音が止まったと思ったら、かけられた声。振り向けば心配そうに顔をしかめてた斎藤さんが立っていた。


「…ゆずはの事か?」

「…。」

「そうか。」


斎藤さんは小さく呟くと静かに私の隣に座った。その斎藤さんの横顔もゆずはの事を思っていることが分かる。


「…。」

「…。」

「大丈夫だ。」


暫く続いた沈黙を破った斎藤さんは私の顔を覗き込んで言った。でも、その顔は心配の色で染められている。


「ゆずはの事だ。鬼のところにでもいるのだろう。」

「そうだといいんですが…。」

「何を心配する。」

「ゆずはは私達の事を大切に思ってくれています。…嫌われたくないと思ってる。だから…、」

「言うな。」


斎藤さんに止められて口を閉ざす。


「それは平助を責めることになる。」

「…そう、ですね。すみません。平助君は悪くないです。」


そう言えば、斎藤さんは綺麗な笑みでほほ笑んだ。


「あの、斎藤さん。」


私はずっと思っていたことを口にする。


「なんだ?」

「…みなさんが仲良くできる方法はやっぱりゆずはが帰ってくることだけなんでしょうか。」

「…。」


斎藤さんは難しそうに顔を歪めた。


「それは俺にも判らない。」


ただ、と続けた斎藤さんに耳を傾ける。


「雪村なら皆の力になれるのではないだろうか。」

「…そんな事出来るでしょうか。」

「雪村なら出来ると俺は信じている。」


斎藤さんの言葉が嬉しくて私は今までの寂しいという感情かどこかに行ったのではないかと思うほど明るく返事をした。


「…早く帰ってきてほしいですね。」

「そうだな…。」


それから私達は月を眺めた。









(そろそろ寝よう。副長に怒られてしまう。)
(はい。おやすみなさい。)
(ああ。)
((…早く、帰ってきて…。))










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