月の夢

□これからもずっと…
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 ―太陽の様な

君の笑顔が

厚い雲に隠れない様に




彼は

いつも

明るく笑った




私は行けなかった。


彼については……。




「ついて来てくんないかな?」


淋しそうに彼は呟いた。


『…ごめん』

私は自分の選んだ答えを告げた。行きたくない訳じゃなかった。どんな所でも彼となら。でも。


「やっぱりな」


彼は私に訊く前から答えを知っていた…。



そのくらい

永く

永く永く永い刻を

一緒に刻んできた。



私達はずっと一緒にいれると、……信じていたのに。



彼と私は離脱するまでの間………笑い合った。



無理して笑っていたのがわかっていた。………お互いに。





―離脱当日、彼は私に口付けをした。


「好きだった」


彼に言われた最後の言葉。


…嬉しかった、でも、自分の気持ちは伝えられなかった。…最後まで。



好きだった?私、私もね、ずっとずっとずっと、好きだったよ。





時は少しずつ過ぎた。


彼がいなくても……。


私の時は止まったように動かなかった。


生きている気がしなかった。




ハラハラ

桜の花びらが舞い散る

ハラハラ

ハラハラ

ハラハラ



何をしていても、思い出すのは“彼の顔”笑顔ばかりが頭をよぎる。



気付いた時には、頬を涙がつたい落ちる。


誰かに聞かれないように、声を押し殺し、静かに泣いた。


泣いて

泣いて泣いて

泣いて泣いて泣いたのに

涙は流れ続けた。




帰ってきて。


好き。


大好き。


会いたい。


会いたいよ…。





願っていたけど、こんなのって、こんなのって……。




『…平助。平助ってばっ!!!嫌だよ、嫌だよ…しっかりしてよ、平助』


「…好き、な女が、死ぬとこ、なんて、見た、くなかった。…す、きだ。好きだった。初め、て会った、ときから……」


消えそうな掠れた声を紡ぎながら、彼は言う。



伝えなきゃ

伝えなきゃ

伝えたい



『平助。もういいよ…わかってる。私もね、初めて会ったときから、ずっとずっとずっと好きだったよ。死ぬなんて許さないからね。だから、お願い生きて……じゃないと私も腹切って死ぬから』



私は彼へ口付けをした。


彼は驚いた。


でも、これはあの日の仕返し、久しぶりに明るく笑った彼を見た……。



こんなときだからこそ、昔みたいに笑顔をみせた。



彼はきっと峠を越えられない。心の中で泣いた。


彼は変若水を飲んで
………………羅刹になった。



でも、そんな事、私には関係なかった。


それが障害となっても、彼が生きていてくれるなら……。





彼に会ったら

ずっと一緒にいよう

後悔しないように

何度でも伝えたい


……好きだよって
 

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