月の夢

□アナタノソバニ
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ああ、桜色で空が染まってる…

アナタトワカレテ…
数百年…


私は前も見ずに、ただ空だけを見上げていた…


何時間ここにたっていたなんてこともわからない


ただ、ただ、桜色の空を見上げていた


「…お前さっきから、飽きない?」


『飽きない』


「ふーん。どうでもいいけど、そこ邪魔なんだけど」


私は目だけを動かし、彼をみた…


水色の真新しい制服に身を包んだ少年がそこにいた。


「退きなよ」


『イヤダ』


反射のように拒否を示した私に一瞬驚いたけれど、面白そうに笑いだした


「イヤダって、そんな桜ばかり見て面白いわけ?」


――お前はいつも桜ばかり見てるよな、見てて飽きない?

――…は飽き性だよ、こんなに綺麗なのに


『貴方は飽き性なの?綺麗なのに』


「俺は桜なんて見ても何も思わないよ」


カサナッタ…あの人の言葉と


『じゃあ何で立ち止まったの?』


「それはお前が邪魔だったからだよ」


『ふーん、でも通ろうと思えば通れるでしょ』


確かに道の真ん中に立っている…けど、自転車が通れるくらいのスペースはあった


「…お前デカイから、」


『デカイって女の子にそういうこと言わないでしょ、普通』


皮肉気に笑う彼に釘を刺すように普通と繰り返した


『私、悲蓮遡原って言うの』


「何でいきなり名乗るんだよ、」


『、、、気分だよ、気分』


「俺はな「お嬢様っ!此方に居らしたのですね!」」


家を行き先も告げずに出てきたから、探しにくるとは思ってたけれど、


『溯ってタイミング悪い、空気読んでよ』


「何を仰いますか…帰りますよ」


私の有無を待たずに彼は私を連れて車に戻ろうとした


『また、また必ず、会いにくるからっ!!忘れないで、お願いだから、忘れないで!!』


私はそれを名前もわからない彼に叫んだ――。





貴方が覚えていないなら、
今度こそ、私を忘れないで

私も貴方を忘れないから

辛い過去だから、
忘れてしまっていいよ

今度は忘れないで、薫。





『ねえ溯、この辺りで水色の制服の学校はどこ?』


「先ほどの少年ですか?…確か、、、私立薄桜学園ですよ」


『父上に連絡して…私、転校するから』


私の物語は一歩また一歩と進み始めた。






 
 

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