月の夢

□触レチャダメ
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首に絡み付く腕、綺麗な深紅の瞳に映り込む僕の姿。


「ちょっ…、悲蓮ちゃん?」


彼女の顔が近づいてくる。今の彼女の瞳は、例えるなら、羅刹のような瞳。


でも、羅刹なんかよりも綺麗な緋。


僕は力を込めて彼女の体を押した。


『…!』


彼女の体は僕から離れた。


『…ッ、なに?』


「悲蓮ちゃん…?」


『沖田さん、どうかしたんですか?』


さっきとは打ってかわった様子の彼女…微かに震える喉から僕は声を出した


「君って、羅刹なの?」


『えっ……。』


さっきとは違う綺麗な茶色の瞳が見開かれた…。


長い沈黙が流れた。


『ああ、私、やっちゃったんですね。……でも、私は羅刹じゃなくて純血の吸血鬼。西洋の鬼なんです。』


「吸血鬼?」


羅刹じゃないというだけで、僕の心に余裕が少しできた


『名のとおり血を吸う鬼です。私達は血を飲まないと生きていけないんです。』


泣きそうにゆう彼女に、僕は自然と言葉をはっした


「へぇー、君はこのままだと死んじゃうんだ。…僕の血を飲みなよ。」


『は?』


「飲みなよ、僕の血。」


『駄目ですよ、純血主が血を吸うと血を吸われた人は吸血鬼になってしまう。』


「いいよ」


僕はゆっくりと彼女の華奢な体を引き寄せた




――――いいよ。
それでも、僕は君が誰かの血を…

誰かが君に触れることの方が嫌だからね


僕は静かに悲蓮ちゃんの頬に口付けをした…


僕以外に触レチャダメ


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