BASARA魂【長編】『fifth S』
□『fifth S』【伊達政宗の章】
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簡単に告げられた内容は俺にして見れば凄く重たく感じる
此処に来てから、銃の鍛錬は数え切れないほどしてきた
それは---命を奪うその時はきっと銃を使うんだって思ってたから
まぁ勝手な思い込みなんだろうけど
明らかなる戸惑い
束の間の沈黙が凄く重たい・・・・
やっぱり俺には覚悟が足りてないんだとつくづく実感させられた
何に戸惑っているのか、解からない自身にムカつく
「っ----shitっ---」
自然とそう呟いていた
誰に対してではなくて----自分に対しての憤りだ
「----政宗」
「っ---」
そっと小十郎が俺の髪を撫でてくれる
寄越された深い色味の瞳は懸念とかを吸い取ってくれそうな気がした
「お前に足りないものはねぇと俺は思ってる・・・・まぁ依頼の種類は特殊ではあるが」
「小十郎・・・・」
足りてるとか---足りてないとかじゃなくて・・・・
眉をひそめた俺に、にこりと笑いかけて髪をきゅっと握り込むと落ち着く声色で言葉をくれた
「迷い続けた先が正しい選択とは俺は思わない。その時間が今に繋がるとも言わないし、その分何かを得られる様なgive&takeな世界でもねぇ。
所詮は生きるか死ぬかそれだけだ。お前が生き残ると宿志を定めたなら-----・・・・きっと大丈夫だ」
しっとりと身体の隅々までに染み渡るようなその進言に目を閉ざす俺は生きる事を強く懇願出来るのだろうか
でも感じる温もりはずっと受けていたいと思える
「政宗君----考えて見給え」
「え?」
憂慮に埋れていた俺は松永さんの声で顔を上げた
いつもの微笑があって----綺麗な闇色が其処にある
「卿が居なくなったら----其処の片倉君をどうしろと言うのかね?彼が暴れる姿は出来れば拝みたくないのだがな」
「っぐ----・・・あのな松永っ・・・・」
少しだけ照れた様相の小十郎は恨めしそうに松永さんを睨みつけていた
対面で坂田さんが「っぷ----」と吹き出している
「それに泣き咽ぶ片倉君と言うのもそそられなくは無いが---・・・・組み敷く自信の持ち合わせはないのでな」
「いやいや---なんで俺がお前に抱かれなきゃならねぇんだよ」
「喪失感を埋めるにはそれが一番だろう?」
「松永さんが言うとなんか説得力あるな・・・・」
相槌打った土方さんは妙に納得している
そんな他愛も無いやりとりはとても日常に思えて、ふと気持ちが軽くなった
この空間はいつも緩やかに俺を包んでくれている
温かくて----優しい
そう思ったら---
迷い諦める行為は無用に思えてきた
「ah----・・・・松永さん、俺やる」
きっと---大丈夫
いや、その現実を俺は掴めると思う
「いいだろう」
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