BASARA魂【短編】銀&BSRA

□潜入捜査A5【完結】※R18
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【黄昏】

体の動かない俺を背に歩くコイツの銀色の髪を唯ぼんやりと見つめていた

ふあふあと目の前で揺れてはその身を僅かに光らせる綺麗な髪


オレンジに染まるかぶき町はとても緩やかな時間を感じさせる

大の大人が背負われてる姿が他者にどう映るかなんて全く気にする余裕もなかった




すげぇ---居心地がいいんだ・・・




ほんのりと香水の香りが漂ってくると俺の心はパブロフの犬、さながらの条件反射にも似た安楽に満たされる


どうも---・・・近頃の俺には危機感ってもんが足りてねぇのか、以前にも増してギリギリのやり取りをしてる気がする


テメェの単なる不徳が招いただけなのか?

時代の流れに沿って敵の出方も変わったと言う事なのか?





兎にも角にも---




いつも寸前で・・駆けつけてくるコイツのセンサーは何処に付いてるんだろうな





そして--



そう思えば思うほど----・・・自己嫌悪に陥っていた


大事だと思う存在が出来て---・・・

心にソイツが居座る様になると充足は得られるのに反比例するようにテメェの身に降りかかる危惧に気がつけねぇ


いつも危険な状況にまで巻き込まれてる

半分はあのドSバカの企てだが---・・・




以前の俺はこうまで後ろを取られる様な陣取りをしていただろうか



もっと細部まで慎重に石橋を何度も何度も叩いて渡るような人間じゃなかったか





俺は---・・・鬼の二つ名を・・・忘れかけているのか?



ぼんやりと見開いた先は相変わらず銀色に染まっていて、トクトクと伝わる鼓動が今は---・・・とても苦しく感じる


程なく居城に辿り着くと夕刻のヒルテンホテルは華やかな衣装を身に纏う紳士淑女があちらこちらに見受けられた

どうやら・・なんか催し物でもあるらしい


そんな人波をゆっくりと歩く銀時は「おーすげェ人だなぁ---・・・」と大して興味もないと言った言葉を吐く


長くも短くもある距離がとても穏やか過ぎて部屋に辿りついてそっとソファーに下してくれた時には少しだけ寂しいと思った



全く柄にもねぇ---・・・・



あれから数時間経過して力は入らないまでも指先を動かしたり腕を上げたりする事は出来るようになっていて少しほっとする

目線を落とした先には自らの手が映りこみジャラジャラとした装飾品が妙に可笑しかった



すぃと頬に温かい手が寄越される



目の前でしゃがみ込んでじっと俺の目を覗き込んできた紅色の瞳にドキリとした





「----十四郎」
「----あ?」




自然と寄越された声色は空気に溶け込んで穏やかな音色に聞こえてきた




「お前さ・・・今回の件もそうだけど---・・・なんで毎度毎度こんなギリギリの目に遭うかって考えてるだろ---・・・

んでもって・・・俺とこうなったから---・・テメェ自身の浮ついた心が招いた出来事とも思ってる」
「-----・・・・・」




どうしてこうも・・・コイツは豆腐みてェに緩い癖して妙なとこに鋭いんだ?
俺何も言ってねぇだろがっ・・・







「もしかすると---・・・俺と別れようとか---も思ってる?」
「は?」





その時の銀時の悲しげな顔は多分、今の今まで一回も見たことがねぇ




何---言って・・




戸惑いの色を察したのか、はっとした表情を浮かべて直ぐにいつもの感じで笑いかけてきた




「だってさぁ・・・十四郎の宿志って---真選組な訳じゃん---その職務に支障が出るような俺は----・・・さ」



いつもの感じで笑っている筈なのに・・・いつもの言葉が吐き出せないで居るコイツを見ていたら一気に胸が苦しくなって・・・

直ぐにでも引き寄せてやりてぇのにゆっくりにしか動かせねぇテメェの指先に焦燥し呆れる





「くっそ・・・まだ自由に動か、ねぇっ---・・・」





すぐそこにある銀色に触れる事がこんなにも苦しいと思わなかった
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