BASARA魂【短編】銀&BSRA
□鬼の霍乱※R18
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「うえぇーい---具合悪りぃよぉお・・・だぁあああ-----・・・・総悟ぉおおおおおぉ」
「あああ--・・もぅうるせぇ---・・・」
折角の休みだってぇのに--・・
妙な唸り声を放ちながら黙って寝てくれねぇヤロウにつき合わされている
風邪なんかひきそうにもねぇ元親の身体が妙に熱かったの昨日の夜の事だ
いつも温かいと感じる肌に包まれて目を閉じて、半分夢の住人になりかけていた時・・・
「ううぅ---・・」と掠れた声が寄越されて
現し世に引き戻されたのは確か戊夜に差し掛かった時分
は---?
俺に絡まる腕の力は相変わらず尋常じゃなくて・・・もしここで大火にでも巻き込まれちまったら
この重てぇヤロウ抱えて逃げられるだろうか・・・・
火事場の馬鹿力が何処まで発揮出来るかに掛かってるのか---・・
ん--・・・待てよ?
この階層からどうやって逃げる?
あ--あれか・・・片倉さんと猫宗なら間違いなく様子見に来る筈でさぁ
んじゃぁ・・・大丈夫っつ事で---・・・
はっ!
なんら関係もねぇもん考えちまう俺の頭は多分寝ぼけていたに違いねぇ
「ううー---・・・」
そんな妙妙な回想を終えても尚、聞こえてくる苦しげな声に少しだけ不安を覚えて腕の中で身を捩って体勢を変える
「-----・・・ちか?」
「ぅぅ---・・・」
見上げた先には見惚れるほどの端整な顔立ちがあるには相違ねぇんですけど
いつもと違うのは・・・妙に頬が紅くて吐息が驚く程熱い---・・・
静かに首筋に手を添えてやると薄らと汗ばんだ身体が発熱してるんだと解かった
そう理解した瞬間に一気に眠気が醒めてぱちくりと目を見開いてまじまじと見つめてしまう
「へ・・・熱?・・・っつか相当高いですぜ・・・これ--・・・」
通りで呻き声も上げる訳だ---・・
さて----・・・どうしたもんでしょう・・・
風邪か?
ん---・・そういや・・・昔からネギを首に巻いて寝ると良いとかなんとか---・・・
ネギ?
ネギと言やぁ・・・片倉さんしかいねぇでさぁ--・・・
かと言ってこんな時間にネギくれとかバカ過ぎる・・・・
いやいや---さっきから思想がイカれ過ぎでさぁ・・・
いい加減回転の働かねぇ頭も起きれ---・・・
などとテメェに突っ込みつつ・・・まぁ・・・とりあえず正攻法で--・・・
そう思い立つとなんとか羽交い絞めの腕から身体を抜いて水とタオルを用意しにバスルームへと向かう
リビングの空気は大層冷えていて・・・仄暗い空には相変わらず雪がちらついていた
七日月のいびつな形を一瞥しつつ「寒っ--・・」と小声を漏らす
寝室に戻ってみれば--・・・銀糸が光源の少ない闇の中でもきらきらと輝いて見えた
「とりあえず・・」
静かにサイドテーブルにことりと桶を置いてタオルをぎゅっと絞ると水の冷たさに指先が痺れる感じがする
そっと額に掛かる銀糸をかき上げてそれを乗せてやると少しだけ穏やかな表情に変わった
「んっ----・・・」
薄らと目が開いて---・・ぼんやりとした瞳を寄越してくる
「---・・・大丈夫・・ですかぃ?」
「---ぇ・・」
多分自分が今おかれている状況ってもんが飲み込めてねぇんだと思った
潤んで・・とろんとした銀色の瞳に---柄にもなく心臓がとくりとなる
苦しげに歪む眉と眉間の皺でさえも・・・整った顔立ちには彩るものにしか見えない
「ぁ---・・な、んだ・・・?すげぇ---だりぃ・・・」
すぃと無意識に額に手を添えるとタオルがほろりと落ちてしまった
「ああ-・・動かねぇでくだせぇ・・・折角乗せてやったのに」
「ああん?----・・・何・・・これ?」
「タオル---・・・」
「タ、オル?----何?--・・・」
「綿100%」
「いやいや---・・素材、じゃなくて・・・・よぉ・・・俺」
ん--いつものキレが感じられねぇのはやっぱり熱のせいですかねぇ・・・
それでもなんでも妙にしおらしい淑やかな元親に新鮮さを感じずにはいられなかった
そんな惚けた瞳でこっち見るの止めてくれやせんか・・・
そう思いつつも・・・引き寄せられるように元親にキスを落としていた---・・
「ん---・・」
やっぱり熱い---・・・
見下ろすように覗き込みながら--・・普段お目にかかれない程の弱っちぃ姿に優しく声を掛けてやる
「ん・・・多分風邪・・・ひいたんじゃねぇんですか?熱・・・っぱねぇ出てる」
「はぁ・・マジでか・・・・・」
「とりあえず----寝てくだせェ--」
「ぇ---・・でも・・・総悟は・・・?」
ゆらゆらと心もとない感じの瞳が揺れて妙に可笑しくて勝手に口元が緩んでしまった
「あぁ--デカイ餓鬼が何言って---・・大丈夫ですよ・・俺も隣でもう少し寝るんで」
「そ、・・・かぁ--・・良かった・・・」
心からほっとした声色とニコリと笑む顔がとても色っぽく見えて・・・照れた顔を見られたくなくて直ぐにベッドに潜り込んでいた
人間湯たんぽかと思うくらい熱い身体が冷え切った俺を暖めてくれる
どっちが労わってるんだか解ったもんじゃねぇ・・・
まぁ・・・普段はこんな事しねぇんですけど・・・
熱の出た身体っつぅもんは滅法寒く感じるって---・・・だから元親のデカイ身体を抱き締めてやる事にした
「はぁ・・・・暖けぇな・・・総悟---・・・」
そっと囁かれた掠れ声に昂りそうになる気持ちを抑え込み・・ぎゅぅと絡みつく腕と溶ける程の熱さがすぐに睡魔を呼び寄せる
程なく・・・元親の唸り声が苦しそうではあるが・・・寝息に変わるのを確認して俺も夢路へと旅立った
目が覚める頃には---少しでも良くなってくれ--と思いながら