BASARA魂【長編】『fifth S』
□【小噺@隻眼に映る松永久秀】
1ページ/9ページ
俺が此処に来て・・・・もう数年と言う時間が経つんだな・・・
n----・・・隻眼の視界の狭さにももう慣れたし、同様に此処の人達に関しても打ち解けたと思う
と言うよりか、世間一般的な妙な隔たりなんてものは最初から存在しちゃ居なかったように感じた
開口一発目から気兼ねなく接してくれたし、俺の過去の出来事に関しても穢いもん見るような視線は向けられない
それもこれも・・・
小十郎と松永さんのお陰だ
【隻眼に映る松永久秀】
今日は俺の感じた話をしようと思う
この会社?組織?・・・・『fifth S』と言う名前はもう知っていると思うけど・・・
此処の代表の松永さんってのが俺が言うのもなんだけど
良く解らない人なんだ
ah--別に悪い人なんかじゃないっ
かと言って良い人と言う言葉を当てはめる事も出来ない人なんだけど・・・でもそれでも俺の人生のレールに笑みを浮かべながら一石投じた人物
その場の勢いとか激情に飲まれて前後不覚になったり、理性を失う事なんて絶対にない
どんな時でも冷静沈着で、外輪までも見定めて、適確な判断をする
時にはそれが冷徹なものに感じる事だって多々あったけど・・・・結果としては一番良い形に終息している事が多い
結果に至るまでの過程がどんな非情で苛烈な内容だったとしても、見据える先は往々にして正しいと思える
あの人は・・・不思議
いつも俺の顔を見るなり、にこりと優しい笑みを向けてくれる
ah--まぁ小十郎にしてみればそれが気に入らないらしく・・・
大体いつも眉間に深い皺を刻んで禍々しい空気を漂わせてるんだけど松永さんにしてみればそれが楽しいんだろうな
「今日はいつもにも増して端整な顔立ちをしているな。見惚れそうだよ片倉君」
「---・・・今のこれが端整と表現出来るなら通常時の俺はなんなんだ?」
「そうだな、つまらなそうな顔とでも言おうか」
「あのな---・・・」
いつもの事なんだけど・・・俺はそれが楽しい
小十郎が自分で気が付いているかは解らないけど、松永さんと話している時は良い意味で表情が豊かになるから
怒ったり呆れたり・・・時には笑ったり(主に失笑だけど)
そんな表情を魅せてくれるから見ていて、幸せな気持ちになれるんだ
そしていつもそんなやりとりをしてから、俺を見つめては頬に手を添えて優しい闇色の瞳を注ぎながら、額にキスを落とす
「卿はいつ見ても明鏡止水を髣髴とさせるな」
「っ---まぁああっつぅうながぁあああ!!!」
「何かね?待ち給え、見ての通り私の身体は一つしかないのだよ」
「待ってねぇぇええ!!」
ha--俺としてはこゆ挨拶とかは常だったから大して違和感はないんだけど、小十郎にとってみればすごくムカつくらしい
これが独占欲というものなのだろうか?
だとしたら悪い気はしない
それだけ俺って人間に頓着してくれているって事だろう?
愛された経験なんてなかったし、誰かに堪らない感情を抱くなんてしてこなかったけど、今はそれがある
俺にとってそれが凄く嬉しい
別に気を使ってくれてる訳でもないんだ
そういう固い感じじゃなくて・・・虚心坦懐って言うの?
まぁ俺の言葉で言うならばFranckか・・・
心の壁も何もなくて極自然にそう振舞っていると解る
それはね、坂田さんも土方さんもそう
彼らの感情表現も独特
自らの感情をストレートに表現する事は苦手なんだろうけど、すげぇ素直だから、直球ぶつけられると直ぐに傷ついた顔をする
だからいつも松永さんの言葉に一喜一憂しては溜息付いてた・・?一憂だけかな
「なぁ、松永さん、アンタどうして政宗にはそんな優しい顔するんだ?」
「ん?何かね?嫉妬でもしているのか」
「いや、別にそんなもんは求めちゃいねぇ」
「そうかね、まぁ私が卿に慈悲深い視線を送ったとて、その瞳孔の開いた目じゃ判別つかないだろう」
「------・・・・・」
土方さん撃沈の瞬間だ
自分ではよく瞳孔開いているとか言うんだけど・・・それをいつも肯定されて傷ついてる
見ていて可哀想だとは思うんだけど、そんな土方さんに向けられる松永さんの瞳も充分に優しいと思うんだ
前に言っていたんだ・・・
「土方君の翠色の瞳が深い色味を帯びる瞬間、柄にもなく気持ちが支配されそうになる。
彼はね、誰よりも理不尽な権力に振り回されてきたし人間の醜い争いを間近で見聞し、自らも受け続けていたのだよ。
憎悪を抱きながら耐え忍ぶ心、賞嘆に値する・・・そしてそれはあの瞳に見える---彼の翠色もまた今生の至宝だ」
そう語る松永さんからは思慮深い想いが感じられた
なんでか解らないけど・・・・そゆ内面を俺には明かしてくれる
あえてそれを口に出す事は俺もしないんだけど・・・・
だからきっと---
他の人よりも松永さんの心情ってもんを理解しているのかも知れない
あの人は・・・自分を偽らない
そうそう・・・
A few days ago---・・・こんな事があった