BASARA魂【長編】銀&BSR 泡沫の夢@
□内偵
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人が人を想う心ってもんは無色透明で
普段それが何かなんて考える事もしねぇけど、明らかに身の周りはそういった感情で埋め尽くされている筈なんだ
愛情とか友情とか-----
憎しみでさえも知らぬ内に身体を包み込んでいる
ただそれに気が付くのが早いか遅いかの違いだけで----
〔内偵〕
「heyサド丸、マジで行くのか?」
「は?マジじゃなくイクとかそんな器用な真似出来るですかぃ?アンタ」
「ah---テメェに聞いた俺が間違ってた」
屯所で重たい話を聞いている最中----コイツが何かを含ませた眼光を一辺倒に向けているのが感じられた
十四郎が消息を絶って、どう考えても笑えない内容のやり取りが続く中・・・・・鳶色の髪の合い間から寄越されたそれは----明らかな行動指示だ
その時、隣の小十郎はぼんやりと遠い目線をしていて、そんな無言のやり取りには気がついていない
銀時が走り去って妙な空気の残る局長室----・・・『見廻組』と言う易々と手出し出来そうに無い連中については勲が動くと言っていた
同じく、監察:山崎は「一先ず、副長についての情報を集めます、まだ事件なのか、自発的な何かなのか解かりませんけど」と渇いた笑いを浮かべて、そそくさと部屋を後にする
事件なのか自発的なのか?
確かにそんな二択を考えていられるなら、まだ良いが----悪いがどう考えてももう選択肢はねぇ
十四郎は間違いなく何かに巻き込まれてる
それを程度確信と思わせたのは・・・・サド丸が表白してきた内容
局長室に残されたのは勲とサド丸、そして俺と小十郎
今日も昨日と変わらない曇天と滝みてぇに降り注ぐ雨
ざぁぁと途切れる事も無く聞こえてくるし、いい加減静寂とかってどんな感じだったかと思い出したくもなる
「猫宗、ちょっと俺に付き合ってくれやせんか?」
「--ha?」
「野暮用----あるんでさ」
細められた瞳に少しばかり解からない色を乗せてそう告げてきた
当然、小十郎がふと顔を上げて、そんな言葉を吐いたサド丸を見つめている
「総悟---解かっているとは思うが闇雲に動く真似はまだ--」
「解かってやすって・・・・後先考えずに動こうなんざぁ思っちゃいねぇですよ----」
いつもの憎たらしい笑みを浮かべて、髪をかき上げていた
「それに俺だってこんな土砂降りの雨ん中、出歩くなんざぁご免被りてぇっですって----だからこそ、こうやって暇つぶしに猫宗借りてぇんでさぁ
いいですかぃ?片倉さん」
「あ---・・・・」
柱に背を預けたまま、ゆっくりと小十郎を見つめるサド丸は確かに嘘を付いてるようには見えなかった
「政宗様---」
要するに俺に任せると言いたいんだろう
ま、----確かに、サド丸が俺に何か話したい事があったすれば、小十郎にそれを拒む謂れは無いし、相手が相手だ・・・・
俺も断る理由の持ち合わせは無い
「ok----」
小十郎の肩に手をぽんと乗せて立ち上がり、サド丸の後を続く
「----小十郎、お前はどうするんだ?先に戻ってるか?」
「ええ---小十郎めも少し野暮用が」
「-----そうか」
小十郎の野暮用がなんだったのかなんて---俺に知る由もなく、いつもの様に「帰る際はご連絡を」と言いニコリと笑う
この優雅な笑みが堪らなく愛しいとか----思っていたが押し込めて、局長室を後にした
屯所の細部まで存知してねぇが---程度見慣れた廊下を進みながら、ふといつもよりも人が居ねぇと思う
近々の記憶ではあるが----結構すれ違う隊服ってもんがあった様な気がするんだが・・・・
「サド丸----今日ってなんか事件とかに借り出されてるのか?他の連中」
「ああ----事件って言うか、天災?これだけ雨続きゃぁ人の一人や二人くれぇ消えちまうらしい---」
「天災---・・・・」
何処かで河川の氾濫とか----浸水による被害とかあるって事なのか?
それにしても---・・・・
「そう----人一人くらい容易く消えちまうんでさぁ・・・・・」
反覆するように寄越された呟きに眉がひくんとひそまった
明らかに俺の考えとは違う方向の事を示しているように感じたからだ
ゆっくりと襖を開け放つと、半ば睨むような視線を寄越して来る
「一般庶民だろうが------真選組の副長だろうが、ね」
「------・・・・・」