BASARA魂【長編】銀&BSR 泡沫の夢A
□劣情※R18
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ホテルに戻るまでの道中、政宗様は心此処に在らずと言った感じのまま、押し黙っていた
先般の見廻組屯所での話しの内容からすれば、仕方の無い事であり、俺もそんな状況を打破し得るお声を掛けられそうにない
相変らずの曇天と雷光が心も何もかも埋め尽くす
今が昼時なのか夕刻なのかも解かりそうにないと思った
寧ろ----時間と言うものが平等に刻まれているのかと疑問を投げたくなる----
片手に番傘
もう片方の手で政宗様の手を握り締めていた
恥じも外聞も何もなく----俺は唯、この人が道を見失わない様に手を引いてやろうと---それだけの想いだ
控え目にも握り返してくれる政宗様のぬくもりが指先から伝わって、この御方の心がどんなにくぐもったとしても絶対に見失うまいと思うのは土方の影響なのかと----良くも悪くも感じた---
天導衆と約定を結び、現時間枠に至る数年
そのうち、俺と政宗様が知りうる土方は更に短い----
同列に---銀時と深い仲なった期間も同じだけという事だ---
だが----
「----ah---小十郎・・・・」
「はい」
直ぐ傍に濃茶の髪が見えて----綺麗で真っ直ぐにも前だけを見据えた、蒼色の瞳がある
互いの肩が触れ合う程の距離で-----主を見つめていた----
「十四郎は-----天導衆と邂逅してから、近々までの記憶をごっそりと抜かれちまった---そう言ってたな?」
「ええ----彼奴等の話を真とするならば」
「sure----・・・・」
流石に-----俺の目から見ても、見廻組の両局長が告げた話は作り話とは思えなかった
少なくとも真実を語っている様に感じたし、あんなに入り組んだシナリオを作ったとするならば、逆に賞嘆したいくらいだ
「-----俺には、アイツ等が嘘をついているようには見えなかった----・・・・・確かに佐々木って野郎は何を考えているのか解からない空気を終始纏っていたが
芹沢の方は----どちらかと言えば、妙な算段なんざぁやらねぇ類の人間に見えた---
あざとさも何もねぇ----ある意味不器用な生き方しか出来ねぇ一本気な野郎-----
俺の見解は----間違っているか?」
いや----
俺も同意見だ
寧ろ----過日に土方を生贄に仕立て上げるような真似をした事
心底後悔していると----感じた
「小十郎も-----そう、思いました----少なくとも、我々だけに告げた内容に嘘偽りはないのではと----
もし、----あの場での話が虚構---だったとして、それがもたらすものが何もないと思うのです
それに----政宗様と俺を騙した処で----不穏な空気が払拭される事はないのであれば、黙って見過す訳もないと彼奴等とて充分存知している筈
自らを天導衆の犬ではないと明言し、この場の詳細を真選組へ持ち帰るようにとまで告げた
あの真摯な眼差しは-----我々の良く知るものと一緒です」
俺の言葉を聞き入れるなり、きゅっと左手を強く握り締めてきた---
もうヒルトンホテルの外郭が見える
ここまでの道すがらにすれ違った人の数なんて片手で足る程----
それ程の悪天候なのだ---
天を裂く雷光も時折見受けられるし----その度に政宗様の右目がヒクンと細まるのを感じていた----
「これから----この顛末をどう告げたらいい?小十郎----」
「-----・・・・」
雅やかなゲートを潜り、曲がりくねった道を歩みながらも----俺は押し黙っていた・・・・・
答えが無い訳じゃねぇ----
ただそれを口にするのはとても重たくて----政宗様の気質を解かっているが故に言葉に詰まる
エントランスに着いて、番傘を折り畳み、自然と空を一瞥していた
取るべき道は決まりきっているのだ----
政宗様は誰も見捨てる事なんざぁ出来やしない
真選組の面々もそうだし、銀時に対しても----
そして、この御方の事だ----
見廻組に対しても、同等の想いを抱いているに違いない
時間の長短はこの御方には関係ないのだ
例え一瞬であったとしても----共感し得ると思った時点で、絶対に見放す事などしない----
何もかも受け入れて、ご自身の血がどれだけ流れたとしても、なんら構わないと言った行動に出る-----
それが充分に解かっているからこそ、俺も----返答に困るのだ