BASARA魂【長編】銀&BSR 泡沫の夢A
□辰馬の想い
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予想通りの展開なんてもんは何一つ無い現状だけど----辰馬の方向音痴だけは予定調和の中にあると思い、それに安堵した----
流石に----な
基本羞恥ってもんがあまり無い俺でも-----十四郎をこんなにも揺さぶってる映像を他人に見せたいとは思わない
っつか----
乱れて麗し過ぎる姿を晒すなんて望まねよ---
ゴソ----
「ん----・・・・」
雨でずぶ濡れだった十四郎を白濁塗れにして、気を失うくらい求めて喰らって-----我に返った時も、未だに雨の音が耳に付いた
大きな窓の外----暗夜に降り注ぐ斜線をくたりとした十四郎の背を抱きながら見つめている-----
温かな身体の中に包まれたまま-----トクトクと伝わってくる心音
艶やかな黒髪と----引き締まった仄白い肌
遠くない過去----俺が裂いた傷はすっかり癒えちまっててなんとも言えない粛々とした想いを味わう----
いや----まぁ、全ての傷ってもんは俺の血で治ったんだ----
辰馬が持ってきた術式の恩恵----
もう二度と駆け回る事、叶わないと言われた十四郎の足は物の数時間で完治し、同じく身体の傷も消えた----
お前との刻印が消えちまったと-----嘆いた十四郎の泣き顔が今も脳裏に焼きついている-----
「-----十四郎・・・・」
この人は----間違いなく十四郎だと思う・・・・・
透き通る翠色の瞳も----漢の癖に肌理の細かい肌も----俺が愛した人に相違ない
だとすれば-----
静かにその背に指先を添えて----すすっとなぞっていた
見廻組屯所に居たあの人は----誰?
トレードマークとも言える煙草をふかすあの姿も俺の目には本物に見えた
唯-----身体を包む隊服の色味が違うだけで----鋭い眼光も、漂う覇気も土方----十四郎のもの・・・・・
解せないのは----俺を一度も認識してくれなかった事・・・・・・
「っ-----」
ズキズキと胸の奥が痛い----
そんな繊細な人間じゃねぇし、やれ目が合っただのなんだので一喜一憂するほど若くもねぇよ
かと言って----会話なんて無くても、存在だけで安心出来る程、長年連れ添った夫婦でもない
寧ろ----新婚さんだろ?
結婚したばかりだよ---
俺ぁ・・・・・
それすらも誰かが認めてくれるもんでもないのは重々承知してる
認められようなんて思っちゃ居なかった
だって---俺と十四郎が互いで満たされてたんだ
それ以外何も要らねぇだろ?
こんなにも世知辛い世の中で出会えて、言葉に当てはめられないほどの苛烈な想いを抱き、唯一無二だと信じられるもん見つけたんだよ----
他に何が要るってよ----
元々何一つ-----価値のあるもんなんて持っちゃ居ない・・・・・
この命ですらも、俺自身頓着した事は無かったんだぜ?
ただ-----先生が・・・・・護ってくれたから----
ヅラや---辰馬、そして----高杉が支えてくれた命----
俺個人でどうこう出来るもんじゃねぇだろ-----
だから--身近な存在くらいは信じようと思ったし、テメェの命を軽んじるような真似はしないと誓った----
そんな俺の前に現れたのは----・・・・・