BASARA魂【長編】銀&BSR 泡沫の夢A

□見廻組局長 佐々木異三郎
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「土方君を真選組に引き渡してしまって、本当に良かったのですか?」




わたくし自身----ああは告げたものの、先般の行動

正しい選択だったのかは掴めそうに無いのです



芹沢が此度の顛末を描き、それに動いたまでの現実ではあるのですがね----どうにも、すっきりとした心境になれないのです





それは---きっと、芹沢・・・・・




貴方が未だに抱えているものに秘められているのでないかと言葉にこそしないですが、薄々感付いているんですよ







〔見廻組局長 佐々木異三郎〕





「良くも悪くも----土方は既に真選組預かりとなったのだ・・・・・そこで何を言っても始まらんだろう」


未だに----漫然とした態度のまま、杯を掲げる姿に更なる疑問を投げる気にもなれない--

それは呆れたわけではなく、芹沢と言う漢はそういう人間なのだと良く知ってるが故です


「それに----あの場で土方を見廻組屯所に留め置いたところで、何も意味を為さぬ-----
言葉足りぬという認識は俺にはない----

あの場で告げた内容を奴等がどうとっているのか----どう思う?」
「-----・・・・・」




少なくとも、わたくし達は何一つ嘘偽りなく真実を話した

土方君が過日に天導衆とどのような会話をし、何をされたのかは----申し訳ないですが本人にしか解かり得ぬ事

逆に---記憶を抜かれる前の状況に関しては良く存知しています




「----そうですね----真意の程を探っている状況かとは思います---

いや----もしかすると、疑ってると-----言った方が正しい物言いなのかもしれませんねぇ」
「どうどってくれても構わん-----現状を正す目を持ちえているのならば、それでいい----

過日より根深く巣食う天導衆が何を企み、何を為そうとしているのか----」
「-----・・・・それは-----どうでしょうねぇ・・・・・」
「ん?」




寄越された瞳はとても鋭く、真摯なものであるが、反してまとう空気は妙に穏やかに感じた

それは少しばかりの酩酊が見せる幻なのか----芹沢自体が真選組と邂逅できた事に満足しているのかは、わたくしには解からない




さっきまでざわついていたこの部屋は物音一つ聞こえない






ピピピピ-----っ






そんな静寂を裂いたのは・・・・


「----っと・・・・芹沢、来客です----失礼します」



携帯を検めて、示された名前に口元が緩やかに吊りあがる

約束していたと言う認識は無いのですが、まぁそれでもこうやって一報を入れて来所する彼は律儀なのか、それとも現状を知っていての事なのか

どちらにしても、私の相手というものは芹沢も存知してるらしく、くすりと一笑を零しては、酒を飲み込んでいた

杯をゆらゆらと揺らしつつも、その場を動く様子は無く、先の話を分断された事にも腹を立てている感じも無い




寧ろ、この不意の来客に無言の納得を示している----そんな気がした





「アイツがこのタイミングで来た真意が山ほどあり過ぎて、笑える」






そう言ってくつくつと肩を揺らす----




確かに----その通りですよ


「ええ、まぁわたくしも同感ですね----人間的には至極共感出来ますが---非情な行動を獲り続ける割に未だ固執してるものに振り回されてる感が否めない

先般から-----いや、もしかするともっともっと昔からなのかも知れませんがぁ----」


極自然に自身の眼鏡に指を添えて、芹沢を見下ろしていた

穏やかな顔つきをした芹沢は酒瓶を手に取って、空いた器に酒を注ぎながら、「アレは----」と呟き、直ぐに酒で口を塞ぐ


「自身でも気がつかないほど激情を抱えてる----事ある毎に姿を見せる理由はそれに尽きるというものだ----

此方からしてみれば不確定要素以外の何者でもないが、それは天導衆も同じだろう-----

飼い慣らすには些か気難しい獣に相違ない」
「---彼を飼い慣らせるものなど、おりませんよ----核弾頭をフィギュアケースに入れて飾るくらい危険な行為とでも言っておきましょうかねぇ」
「くくく----それは、扱い方次第では至宝の鑑賞に浸れるという事か?」





芹沢の言葉は確かに一理あるかもしれません



彼は破壊を望む一方で未来を求めてる

自分自身で気がついていない辺り----性質が悪いと言うか、不器用と言うか------


「あまり---お勧めはしませんけどね-----諸刃の剣-----に成りかねない」




わたくしはそれすらも面白いと思いますが----今はまだその辺は曖昧にしておきましょう




「自虐行為は----望みませんから-----痛いのは嫌いです」
「ふははは---」



その時の芹沢の笑いは-----多分ですが-----複雑に絡み合う糸は見透かしてると感じた




彼是、長い付き合いですから-----






敵に廻すのは得策ではない













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