BASARA魂【長編】銀&BSR 泡沫の夢A

□黒欲@
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ゆらゆらと揺られる感じは----誰かの大きな手に抱きとめられているのだと------



薄れゆく意識の中で感じた----


大きな手----


俺みてぇなでけぇなりしたヤロウがもたれ掛っても動じない、安堵出来る感じに流されて-----ただ、視界を閉ざしていた



鼻腔をくすぐる甘い匂いは----全く知らないものであるのに----何処か安らげて-----

ボロボロだった俺の心ってもんは其処でまどろんでいる





流されて-----現実を忘れようとしていた----


俺の知る何かとシンクロしそうなのに----違う・・・・





でも---孤独感---とか、そゆもんを包んでくれそうな気がして・・・・・


この感触がなんなのかも掴めずに-----ただ流されていた・・・・・・















〔高杉晋助〕




存外----容易く手に堕ちた副長さんには拍子抜けだな----

これが、あんなにも牙を輝かせていた野郎か?と思いつつも-----不思議と憤りよりも違う感情が心を占めていると感じた

両手で抱きかかえた状態は----雨を凌ぐ事も儘ならず----この状況で第三者と邂逅すれば間違いなく、不利だな---



そんな危機的状況に置かれていると言うのに----

どうして俺の心は-----浮ついている?


この野郎を-----支配出来るかもしれない現実が目の前に転がっているからか?

それとも----先の見えない未来があまりにも愉楽過ぎて高揚しているとでも----




「っくっくっく-----」




勝手に零れ落ちる笑いを止める術はなさそうで---未だにくったりとしたまま、俺に体躯も何もかも預けてくる土方の存在が現実を彩っている



俺の手中にあるこいつは-----


銀時の唯一であり----


凶事の中心に座する存在




そしてそれをどうしようと思っている?

雨に濡れても艶ややかに輝く黒髪が額に張り付いていて、いつもぎらついていた瞳は閉ざされたまま---雨粒に甘んじる



腕にずっしりと来る重さ---

野郎を手に抱く趣味の持ち合わせはねぇ

無論---男色の偏嗜好でもなく----過日から今に至る長い時間枠の中でも、欲情した記憶は一人を除いて経験がない


そんな一人の漢の唯一を抱きとめている今ってもんは表現し難いな---

こんな状態でコイツを支配したところで満たされるもんは希薄だ---


カカカカッゥ-----っ!!!


天を劈く雷光が暗夜を照らし、降り注ぐ雨は止みそうにない

着流しも何もかもがしっとりとして----自身の髪をかきあげる事も出来ない状況の中、自らの居城へと歩みを進める


長くもない距離ではあったが----物思いに耽りながら歩く時間ってもんは、きっとそこそこのもんだったんだろう

片目に映し出される映像が虚構に思えるのも、全てはこの漢のせいだ




『真選組の土方の記憶をベースにした面白い生体実験』


きなくせぇ匂いしかしない言葉を寄越してきたのは---漆黒の天人だ


前回の傷も癒え、何となくぽっかりと空いたテメェの胸の奥ってもんを感じながら、この先の道ってもんをぼんやりと考えていた

愚直で馬鹿な幕府の人間どもは学習能力ってもんが皆無なのか?と憤りを感じ、煙管を咥える




この冷えた空気の中、窓際で佇みながら、外界を見下ろしていた

漆黒の羽を見せ付けるかのように優雅にも羽ばたき降りた、一羽の鴉が目の前に居る

光のない瞳でじっと俺を見ているようにもみえるが----そんなもんは単なる気のせいだ

人間なんぞにコイツ等が興味を持つわけがない----


どう考えても、アイツ等の方が生命体的には上位に位置してると俺は思う




野生動物ってもんは---存在そのものが美しい・・・・


それは生きる為だけに命を費やしているからだ


他者を陥れる必要も物に固執する事もない




ましてや、財を成す欲も-----自身の身に余る業も要らない


生きる事のみを純粋に追い求める----高貴な生命体----
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