BASARA魂【短編】銀&BSRA

□優しい目※R18
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小十郎は俺をいつもきつく拘束はしない----
広大な敷地で飼い慣らされている家畜みてぇな感じの緩い感じで束縛してる


全ての選択肢は俺にあるのだと言わんばかりの感じで・・・・・蒔き得して----食いついては、それを取り上げる

更に噛み付いて欲しいと願っているのか----

それとも、何度も何度も絡みつこうとする様に悦楽を覚えているのかは解からない


時折、サド丸よか----性質が悪いと思う

それもこれも-----事の始まりが主従だったからなのかと-----どうにもならない過去を責めたくもなる


例えばもっと違う立場で出会っていたら---、頑なに虚勢を張る必要もなかったのだろうか



小十郎の存在の感じられないリビングは妙に広さと切なさを感じさせる----

落ち着いた色合いで満たされた空間は、違う角度から見てみればぬくもりを感じないという事だ


静けさの増した部屋で---ぼんやりと視線を投げていた----

素直に何もかもを吐露できたらどれだけ楽だろう----

妙な理性も、プライドも棄てて----己の求めるがままに言葉を発し、行動出来れば、無駄に思い悩む事なんかしなくていいのだろうか?



其処まで考えて---逆に可笑しいと思った


俺はどうしてこうにも、素直な心情に溺れようとしないのだろうかと---

小十郎は----奥州を離れた時から---立場を変えただろ







腹心----から・・・・・情人に



それがどれだけの決意のもとだったのかは解からないが---少なくとも生半可もんじゃなかった筈だ

受け入れた俺も--そうだったろう・・・・・

一つの壁を乗り越えた先で----更なる壁を見つけた

乗り越えたからこそ見つけられたものであって----一つ目の存在とは全く違うのに----後、何枚存在してるんだと思っちまう

次から次へと形を変えて、重厚そうな分厚い隔たりが目の前を塞ぐから---一枚一枚突き崩して----がらがらと何かが崩れる音と同じだけ満たされて----溺れて、もっと欲しくて----





井の中の蛙ってもんはこゆ心境なのだろうかと-----自らが貪欲でいつまでも枯渇してる事に気がついた

見えぬ先に妄想して、ドキマギして----何時まで経っても手に入ったという安堵を得られる事がない

逆に、全てを支配した瞬間、いや、された瞬間でもいいが----、一気に虚無感ってもんも手にしそうだ



その時俺が飽きるのか----

それとも小十郎が元の立場に戻ろうとするのか・・・・・





考えたくもないが考えちまう

どちらにも言い訳が出来るだろ?




俺からしてみれば、-----腹心に只ならぬ情愛を注ぐなんて、国主として如何なもんだろうかとか----普段考えた事もない一般的な常識とか通説を並べ立て元の立ち位置に戻そうとする事が罷り通るだろうし、小十郎からしてみても、一介の腹心が主たる存在に欲情するなど無礼極まりない事と------自身を戒める言葉を盾に関係を崩せちまうんだ



互いが唯一だって一線は絶対に途切れる事はないにしても、今の夢みたいな関係を無いものにする事はいつでも出来ちまう



どっちも----導火線ってもんを持っちまってる-----





「っ!------」




取り止めの無い事を考えて、何を馬鹿な事を---っと思わず自嘲しちまった・・・・・



そんなにも容易く壊れるもんじゃねぇだろ----




何をこんなにも不安に陥ってんだよ・・・・・

前回の時もそうだった

小十郎が部屋を出て、物の数分で全てがアンチ的なもんに変わって-----いつもの自信ってもんが揺らいだ



毎度の事ながら、----情けない・・・・・


小十郎を誰よりも信じてるし、口にはあまり出さねぇけど----きっと愛してる


俺はこんなにも揺らぐが---小十郎はきっと妄信的に直向きで一途な想いを抱いてると-----どうして、相手の事は言えるのに、自分の事は信じられないんだろうか?



大きくて、きっちりと磨かれた窓に手を当てればひんやりとした感触が伝わってくる

外界は----爽やかに晴れ渡っているってぇのに-----何もやもやしてんだ?俺


俺が纏っている着流しの蒼よりも、薄い感じの空がやけに穏やかに見えるのに-----一度浮んだ妙な考えってもんはじくじくと心を蝕んでいた





「ahhhhhhhhh!!!-----面倒くせっぇ----何ちまちまっしてんだっよ!俺っ----」


思わず自分に向けて激昂しちまった・・・・・

ポスンっ----と窓に背を預けて、直ぐに目元を覆って、あああ----っと唸っていた



いや、唸りっていうのか-----漏れた声って言うのか-----兎に角気分転換が必要だと想う----

小十郎が旅立ったばかりのこの部屋に、今居続ける事は----良からぬ方向にしか考えが向きそうにない

だったら気分転換にでも外に出よう----


たまに一人で漫ろ歩くのもいいのかもしれないし、----あまり詳しくは無いが街並みってもんをぶらぶら眺めて見てもいいだろう----


よくよく考えてみれば、かぶき町を一人で優雅に歩き眺めるという事をしてこなかったとも思う







まぁ-----




色々立て込んでたからな---


行動が浮かべば、現金なもんで----さっきまでの沈鬱なもんは一気に消え失せていた

寧ろ----ちょっと高揚してる----




きっと----新しい発見とかぁ----こんなもんもあったんだなぁとか----真新しいもんが見つかるだろうと勝手に思っていた

そしてそれを小十郎に話す時間ってもんまで想像しちまってんだろな----



こんなお店があった、とか・・・・気に入って買っちまったとかぁ?



確かに----妙に初々しい会話じゃねぇか?そゆのって----・・・・・




さっきの煩い心臓とは別の感じで----未知の見聞に高鳴る鼓動を感じながら、俺はヒルテンホテルを後にした
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