BASARA魂【長編】銀&BSR 泡沫の夢A
□一択
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ざあああああああああああああああああああああああ
相変らず雨が降り注ぐ暗夜を柱に寄りかかりながら、ぼんやりと見上げてる俺はただ一つの事だけを思い、願っていた----
十四郎が不器用にも俺に笑いかけてくれていたあの時が戻ってくれば良いのにと--・・・
似合わない程の儚い笑みを浮かべたあの麗人をどうして抱きとめておかなかったのか----
一度手放したら二度と手に入らないのかもしれないって簡単な結果を想定出来なかったテメェの甘さに反吐が出る・・・・・
アイツの性格を良く知っていただろ
一度決めたら、間違いなく突っ走っちまって形振り構わずに前だけを見据え目的を果たすまで帰ってこない
解かっていた筈だ
どうして-----・・・繋ぎとめて置かなかったのか-----
自らの右手をきゅっぅと握り締め、しっとりとする夜風を受けながら、曇天から堕ちてくる雨粒は止め処なく降り注ぐ
ここ数日の雨量ってもんは恐らく相当のもんだろうと思った
まぁ平均値ってもんを誰が定め、それがなんの目安になるのかも解かったもんじゃないが目の前の現実が間違いなく混沌としている事だけは解かる
「ねぇ---旦那・・・・さっきも聞いたけど、良かったの?あの状況・・・・」
「ああ-----さっきも言ったけど俺が決められるもんじゃねぇだろが----・・・・・何?お前・・・・どうやって否定出来んの?
何かを否定するって事はそれ相応の理由ってもんが必要だろうが-----・・・・なんかあんの?
二人っきりにしちゃいけねぇ理由ってもんある訳?-----」
「いや----何もないけどーーーさ・・・・・・」
「だろ?----だったら仕方ねぇじゃねぇか---」
「----仕方・・・・ない、ねぇ----」
「ああ、仕方ないんだ・・・・」
それは----まるで、自らの過去の決断を赦せと言ってる様な気がして、----いや、寧ろアレ以外の選択の余地なんてなかったのだと自らを慰めてる様な妙な錯覚も覚えて----そっと肩口に手を添えていた
寒くもないのになんだかゾクゾクとした悪寒を感じ、目の前のほうき頭がどうして屯所に居るんだろうかとか意味のない疑問と対峙する今----
俺は息をしてるのに、生きていると同じとは思えないなと------虚ろなもんばかり考えてる・・・・・
現実ってなんだろう
真実ってなんだろう
俺と十四郎が普通の生活を送る
そんな他愛もない事がどれだけの罪となるのだろうか
確かに互いに自らの歩んできた道のりってもんは真っ当じゃなかったと自負していたし、平穏なんかがあるわけないとも思っていた
戸惑いながらも触れ合って-----可笑しいと思いながらも何故か止められなくて、意外にもすげぇ温かいぬくもりを感じて堪らなくなるって今までになかったんだよ
それは俺も十四郎も----
だけど、笑えない凶事を乗り越えて、壮絶な傷を何度も受けながら思った事は一緒だった
ただ一緒にいたいって思うことは罪じゃない--
なのに-----・・・・
世間一般的なそれは俺達には高嶺の花なのかもしれない
「ねぇ旦那?」
「----ああ?」
ほうき頭は屯所の廊下に腰を下ろしていて襖を背に片膝に腕乗っけてなんとも言えない表情を浮かべていた
忍者だろうがっ----
何、あから様に姿晒してんだ?といつも出来る突込みが出来そうにない
「さっきの子----って人間?」
「----」
寄越されたもんも真っ当じゃねぇ・・・・
少なからず、俺はその存在をこの腕に抱き、泣いたり笑ったりする姿も見てきた
あの感触が幻だとするならば、俺の頭が可笑しいんだろうなって思う
「はは---可笑しな事聞いてるって俺様も解かってるんだけどな----・・・・なんでだろう・・・・・」
いや、きっとお前の頭も俺の頭も可笑しくなんかないって----
経験した事のない現実ってもんが転がってるだけなんだ
未曾有の出来事って奴だと---俺は思いたい
「だって----俺様が一緒に居た副長さんが間違いなく過日から存在し続けた人だッて思う---
憶測とかじゃなくて、さ-----まぁ・・・・見廻組屯所に居た時から偽者だったらあれだけども-----・・・・・」
「-----・・・・・・・」
「副長さんが見せた苦悩の表情ってもんは------本物だった・・・・・
俺様の目にはそう見えたし、----アイツだってそう思った筈・・・・」
「あ---?アイツ?」
「んっ---!あ!----いや、こっちの話だけど・・・・・・」
ほうき頭が何かを隠してるのははなっから感じられたけど------それを追求すべきか否かってもんはどうでもいい---
だって俺だってそう思っていた----
俺と一緒に居た十四郎と----俺の手を払いのけた十四郎・・・・・
どちらかが本物だとすれば、----後者の方がらしいんだ---
100%俺を否定した彼は-----昔、俺に対して刃を向けてきた時の雰囲気と酷似してる
他者を受け入れない魂の姿・・・・・・・・
「御免----俺様にはアンタが連れてきた副長さんは-----人に見えなかった・・・・・
昔からさ---そゆ、もんって解かっちまうっていうか----感じちまうっつぅか------
あれは・・・・・なんか違うよ----・・・」
「----違うって・・・・お前」
「うん----マジ御免・・・・旦那には酷なこと言ってるって解かってるけど----此処はマジで言わせて欲しい・・・・
あれは・・・・・生きていない----
人間じゃない・・・・・
違う------風体は副長さんかもしれないけど-----違うよ・・・・違うんだっ」
こんなにも真面目に語るほうき頭を見たことがない----
過去にあったのかもしれないけど------それの非じゃない程、声色が震えているのが伝わってくる
こいつの言うように----俺と一緒に居た十四郎が偽者だったとして-----かと言って俺はどうすればいいのだろうか・・・・