BASARA魂【短編】銀&BSR@

□愛の形【五】双竜編
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【小十郎の場合】

「・・・政宗様」





気がついた時には俺は餓鬼を抱き締めていた。

と言ってももう餓鬼じゃねぇがな・・・。

頭で理解する前にもう身体がこいつを覆っていたんだ。


身も心もボロボロに成り果てて



消えちまいそうで・・・堪えられなかった。





自分で自分に驚愕したよ。

あれほど・・・

穢したくないと思って

触れることなく

傷つけることなく

傍に居られるだけで良かったんだ。




こいつに降りかかる嫉妬やら憎悪やら嫉視、怨望をこの俺が代わりとなって
身に受けてやろう。

そうすればその瞳は汚れることなく前だけを見続けることが出来るはず・・・。


なぁ・・・


もういいじゃねぇかぁ・・・・。


こいつの苦しみの器は飽和状態だ・・・・。

臨界点突破しちまって、その器ごと崩れ落ちそうになっちまってる。

神なんざいるとは思わねぇ。
苦しい時だけ望まれる神なんざぁ居ないほうがいい・・。

だからこそ俺は今の今まで神っつぅ偶像の産物に頼ったとこなんざねぇし
苦しかろうが痛かろうがそれは自分の業だと思い、その身に甘んじてきた。




だがな・・・


一度でいい。



なんらかの代償を払うことで神とやらが奇跡を起こしてくれるっんなら


俺のしみったれた命も血肉も一片も残さずくれてやる。



くれてやるから・・・・






こいつを・・・・・






この人を・・・・






連れて行かないでくれ・・・・・・






こんな俺を・・・


空っぽで人の怨念の塊で出来た鬼畜同然の俺を信じて、全身を預けてくれたこの人を
俺の生きた証として護りてぇんだ


この人がまだ受けなきゃなんねぇ苦しみの行があるっつうなら
俺は総て棄ておいてそれを身に受けてやるから。





この人の左目に宿る綺麗な魂は穢さないでくれ




それが・・・・・

今の今まで何も持たずに生きてきた俺の最初で最期の唯の望みだ。
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