短編(SD)
□寄り道
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暫くして、三井は戻って来た。
『悪ぃな、待ったか?』
『いや…』
『ほらよっ』
三井から手渡されたものは、よく自販機に売っているような温かい紅茶だった。
『それやるよ。俺の奢り』
『………』
黙っていると、三井が怪訝そうな顔をして近くのベンチに腰を下ろした。
『んだよ。礼くらい言えよな』
『……ありがとう…』
『それでいいんだよ』
言って、三井は太陽みたいな笑顔を向けた。
それだけで、流川は自分の内側からじんわりと暖かくなるのを感じた。
いつもと違う。
たまには、こんな帰り道もいいかもしれない。と、流川は人知れず思った。
‡end‡