君のいる日常 T

□君のいる日常 7
2ページ/2ページ


「ずれてるて・・・」
「ぎゃはは、ずれてるだってっ」
「確かに水月は普通とはちょっとずれてるよな」
「日吉、どさくさに紛れてなに言うとん」
「ずれてるけど、そこが可愛いんだよね〜おっし〜」
「そうや、ずれてても可愛いからええの」
「インタビューされてても、ずれ過ぎてて答えに困ることあるぜ」
「天然と何とかは紙一重、ってことじゃねえのか」
「それは天才と、ですよっ。それになんでみんな、ずれてる、のが前提でしゃべってるんですかっ」
「それはやね。普段口に出せんことを井上さんが言ってくれたもんやで、な?」
「ひどすぎるっ」
「ごめんごめん。本当にいい意味で、だよ。いい意味でずれてるんだ。普通の感覚と」

何気に一番ひどい、と誰もが思う。

「独特なんだよ。相手を思う感覚みたいなものが。思わず意表を突かれるというか、でも嫌な感じはしないんだろうね、聞かれる方は」

一同、聞き入る。
何事も本職の人の話は面白いのだ。

「それでね、どうかな。さっきの話」
「自信がありません・・・私のやってることなんて遊びみたいなものです」
「もちろん、責任をもって厳しく指導するよ。こっちも商売だからね」
「中嶋、やってみたらいいんじゃねえのか」
「だから、なんでお前が先に言うねん。それは俺の仕事やろ」
「お前が言うと、公私入り混じってこいつが混乱するだろが」
「よく分かっとんのやね」
「毎日お前らの会話聞いてれば嫌でも分かる」

しばらく考えてから、水月が口を開いた。

「やってみたいです。うまくできるか分からないですけど。でも、」

そこで言葉を区切って忍足を見る。

「先輩、迷惑じゃありませんか」

今日は敬語を直せ、とは言わない。
こういう、第三者と呼べるような人がいる時には水月が気を遣うのを知っているから。

「迷惑なんて、俺が思う訳ないやろ。自分の好きにしてええんやで。大丈夫やから」

なんだかんだで幸せな気分になるメンバー達。
水月は井上の方に向き直り、きちんと頭を下げる。

「是非やらせて下さい。よろしくお願いします」
「あぁよかった。跡部くんに中嶋さんは難しいって聞いてたからドキドキだったよ」
「それは言わない約束ですよ」
「難しいってなんですか」
「言葉通りだぜ」
「まぁえんちゃうの。ちょっとずれてて難しい子なんやから、実際んとこ」
「なにそれ、先輩まで。ひど〜い」

忍足とその仲間達に見守られて水月の新しい明日が始まる。
もちろんそこに忍足の姿が欠けることはない。


End.

前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ