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□君のいる日常 125
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はあ〜、綺麗やったなあ〜、水月。
ほんっまに綺麗やった。
もうなんか圧倒されてしまうほど綺麗やった。
内側からこう、輝くっちゅうかなんかそんな感じで。
みんなもびっくりしとったで。
あのかなえちゃんと由衣ちゃんも、何も言えんでいたくらいや。
そのくらい綺麗やったんや。
跡部の家での披露宴では、テニス部の連中の策略で挨拶させられるなんてこともあったけど、俺らが考えた通りの、ええ披露宴やったと思う。
俺らな、披露宴ではみんなに楽しんでほしいて思ったんや。
俺らを今まで見守って応援してくれたみんなに、御礼の気持ちを込めて楽しんでもらおうて考えた。
せやから、スピーチとか余興とかそんなんは一切なしにして、とにかく美味しいもん食うて、お喋りして楽しんでもらおうて。
水月と俺はふたりして、そんなみんなの間を行ったり来たりして、御礼を言って回った。
もちろん水月は誰かのとこで話し込むたんびに、「ご馳走を食べる」という目標を着実にこなしとった。
笑ったで。
いつ見てもなんか食うてるんやもん。
でもな、それがな、水月が自分から料理を取りに行って食っとるんやないから、余計おかしいねん。
どのテーブル、あるいは誰のとこに行っても「あれ食べ、これ食べ」て言われとるねん。
ようするに、食いしん坊がばれとる言うことや。
で、これまた本人が言われるたんびに、嬉しそうに美味そうに食うやろ。
ま、それだけでこの披露宴は大成功やった感じやね。
そんな水月を内藤さんは撮りまくっとって、あ、内藤さんな、朝からずうっと付いてくれとったんや。
水月が仕度しとる時からずっとや。
さすがに、着替えてるとこは撮れなかった、って笑っとったけど。
当然やけど。
そんなん内藤さんでも許されへんもんな。
それでもなあ。
こんなに撮ってどうするねん、ってほど撮っとって。
そしたら「写真集を作ろうと思うんだよね!」とかよう分からんことを言っとった。
記念に俺らにくれるんかな、って思っとるんやけど。
でな、そんなこんなで披露宴は無事終わった訳や。
あ、そうそう。
水月はいつもの通り、時々俺をきょろきょろって探して、見つけると手を振ったり、時には俺んとこまで走ってきたりしとったで。
ん〜、もう、ほんまに可愛くてなあ。
あ、綺麗なんやで。
基本的にはものすっごい綺麗やねん。
綺麗なんやけど、俺んとこにタタタッて走ってくるんは、それはそれは可愛くて。
もう可愛くて可愛くて、そのたんびにぎゅう〜って抱きしめた。
結婚式ってええで〜。
何しろ、いっくら抱きしめてもキスしても「ダメだよっ!」とか言われんのやもん。
周りからは「やっぱりバカだな」とか「またやってる」とか「もう見飽きた」とか聞こえてたけども。
ま、そんなん無視や無視。
ふふふ〜ん。
俺の嫁さんなんやも〜ん。
抱きしめてキスしてな〜にが悪いっちゅうのや。
あ〜、も一回したいなあ、結婚式。
でな、その後は二次会や。
これはテニス部の連中と例の高校テニスの連中が一緒んなって計画してくれとってな。
俺らは何も知らんでいたんやけど、これがすごかったで。
なんと跡部んちが縁日になっとった。
それにしてもや。
披露宴の会場として、あんだけの場所を使っときながら、まだ縁日やる場所があるて何やねん。
おかしいやろ。
分かってはおるけど、やっぱあの家はおかしい。
人間の住む家やない。
でもま、そのおかげで水月を喜ばすことができたんやから、人間やない友達を持っとってよかったってことやな。
そう、それで縁日やけど。
ほんまにいろんな部屋やら廊下やら階段やらに屋台が出とって。
その屋台はほとんど氷帝テニス部の現役部員達がやっとった。
宍戸が命令したんやろと思うけど、「忍足先輩と水月先輩にはお世話になってますから!」なんて言われるとちょっと嬉しかったな。
いろいろあったで。
普通に縁日にあるもんはほぼ揃っとったんちゃうかな。
水月はそりゃもう、大喜びで。
大喜びで千歳と遊んどった。
なぜや。
なぜ千歳や。
千歳なんやっ!
ほんまにもう。
水月の千歳好きはどこまで冗談なんか分からんから困る。
一応、「どこまで冗談なんや」って聞いたら「冗談なんか全然ないよ。千歳さん、好きだもん」とか言いよった。
隣で千歳がかすかに引きつっとった。
そりゃそうやろ。
俺と結婚したばっかやのに、「好きだもん」はないやろ、っちゅうねん。
せやからな、ちょっぴり意地悪したった、ふん。
スケートの海外の選手(もちろん女の子やで)に、好きな金魚をプレゼントしたる言うて、わいわいと金魚すくいをしてやった。
みんな、結構セクシーなドレスとか着とってなあ。
そんな子らに囲まれて俺が金魚を捕ってやっとる訳や。
で、拍手喝采されてる訳や。
ふふん。
あっという間に、やって来たで。
ピューッ!て感じで。
「ずるい、私にも捕ってよ!」とかほっぺた膨らましてな。
大笑いやったで。
「俺をほっといたんはお前やろが」って言うたらな、「ほっといてないもんっ。千歳さんと遊んでただけだもんっ」やて。
それがほっといてる言うことなんやけど、俺の可愛い嫁さんにはそこは分からんみたいやから、まあええことにした。
やって、可愛いんやもん。
あ、水月な、二次会は違うドレスに着替えたんや。
白いドレスなんやけど、今度のはくるぶしくらいの丈で、ふわふわしとるやつ。
いかにも、って感じのな。
これまた絶品やった。
ウエストんとこを緑色のリボンできゅってしばっとってな。
ウエディングドレスん時と同じ靴やったんやけど、今度はその靴がよう見えて可愛らしいのなんのって。
本人は「風と共に去りぬなのっ」とか言っとった。
水月、好きやねん。
「風と共に去りぬ」。
特に最初の方のパーティーん時にスカーレットが着とるドレスが大のお気に入りで。
白くてちょっと模様が入っとって、緑色のベルトが付いとるやつ。
まあ、確かに似とらんこともないから、二次会のドレスは「スカーレットのドレス」って呼ぶことに決まっとった。
そう呼ばんと怒られるねん。
決めたんはもちろん、いつもの通り水月やけど。
ほんまにそういうのをあれこれ決めるんが好きやでな。
可愛いから、いくらでも決めてええけどね。
このドレスはな、日吉んちとかなえちゃんちの親父さんとお袋さんらからのプレゼントなんや。
言ってみれば、水月は自分達の子供みたいなもんだから、って。
それ聞いて水月はもちろん大泣きしてしもて。
でも、ほんまそうなんやもんな。
小さかった頃、どっか行く時はいっつも水月も一緒やったんやって。
ただ、かなえちゃんちの時は日吉が、日吉んちの時はかなえちゃんが一緒、ってのも多かったらしいけどな。
それでもいっつも水月のことを気にかけてくれとったんやて。
大きくなってから、そのことがどれだけすごいことなのか分かったって水月は言うてた。
せやからもちろん、結婚式も披露宴もどっちの家の両親にも来てもろた。
みんなして泣いとって、もうどれが誰の親なんか分からん感じやった。
水月はほんまに幸せな子やと思う。
みんなに可愛がられて、愛されて。
これからはそこに俺も加わるんやな、ってほんまにそう思った。
俺が水月を幸せにするのはもちろんやけど、水月を愛してくれとる人達の輪に俺も加わるんや。
水月、俺、ほんまにお前と出会えてよかった。
結婚できてほんまに、よかったで・・・


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