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□君のいる日常 39
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入学式もまあなんやな、いたって普通〜に終わって、俺は青学に通っとります。
ただなぁ、それから毎日毎日おかしな奴に付きまとわれとるんやけど。
ほら、今日も・・・

「まだ気は変わらないのかな?」
「朝っぱらからうるさいな。何度聞かれても俺の気は変わらへんのや」
「そんなの分からないじゃないか。言い続けたら変わるかもしれない。だから、僕はずっと言い続けるよ。君が卒業するまでね」
「不二、お前ちょっと怖いで」
「よく言われるけど」

そう、不二や、不二。
テニス部入れてしつこいねん。
毎日やで、毎日っちゅうか、毎朝こうやって俺んとこやって来ては同じこと聞くんや。
最近は水月まで動員しようとしとる。
ま、水月はそんな策略には乗らんけどな。
うん、水月な、水月。
元気にやっとるよ。
こないだの週末もちゃんとうちに来て泊まってったし。
泊まってったし〜、んふふ〜。
なんやもう、会えない分だけ気持ちが募るっちゅうかやね。
それは俺も同じなんやけど水月の方がやね。
俺への気持ちが倍増中らしくてやね。
あ、俺ははっきり言って前々から毎日毎日気持ち増幅中やからあんま変わらんのやな、うん。
そう、倍増中らしくて、それはもうべたべたべたべた。
うちにいる間中、べたべたべたべた。
つまりやね、俺から離れんの。
ずうっとやで。
さすがにトイレと風呂場はついて来んけど。
俺としたら別に全然構わんけども、そこら辺は乙女の恥じらいやね。
せやから俺はトイレはぎりぎりまで我慢するし、風呂は速攻で上がっとる。
こんなチャンスは逃したらあかんもんな。
きっとこの状況に慣れでもしたら「侑士、しつこいよ」とか言うに違いないんやから。
意外とあっさりちゃんやねん。
俺のこと大好きなくせして。
素直やないねんな〜。
ま、どっちの水月も可愛いからいいけどな。
それにしてもなぁ、水月ってやっぱり可愛い子なんやと分かったで。
大学にもな、それなりに可愛い子はおるし、相変わらずというか何というか俺はかなりモテとるけど水月にかなう子なんかひとりもおらんねん。
ひとりくらいいてもよさそうなもんやのに。
もっともこれをかなえちゃんに報告したら「先輩、大学生にもなって『あばたもえくぼ』って知らないんですか」とか言われたけど。
何言うてんねん。
水月はあばたでもえくぼでもないわい。
また今週の金曜日に来るねん。
早よ、来んかな〜。
ほんま会いたいわ。

「忍足、気持ち悪いよ」
「なんやねん」
「顔が緩んでる」
「ほっとけ」
「どうせまた水月ちゃんのこと考えてたんだろうけどね」
「分かってるんなら聞くな」
「水月ちゃん可愛いもんねぇ。あんな可愛い子いないよね、ホント」
「お前に言われるとなんや嫌な感じするから言うな」
「なんで」
「知らんわ」
「それでさ、さっきの話だけど」
「入らん」
「どこにも入らないつもり?」
「え?」
「サークルとかさ」
「そんなつもりはないけど」
「ふうん。テニスサークルとか?」
「しつこいな。テニスはやらん」
「じゃあ、どんなの?」
「お前に言う必要ない」
「テニス部入りを断るんだったら僕にも聞く権利あると思うけど」
「まったく、うるさいな、お前は。本とか映画関係」
「へぇ〜、水月ちゃんが言ってたけど、ホントにそっちなんだね」
「お前、水月となにしゃべっとんのや」
「ん?君の話」
「俺?」
「そうだよ。君が毎日どんな女の子とお昼食べてるとかそういう話」
「余計なこと言うなや。結構あれで心配性で泣き虫なんやから」
「でもなんか平気だって言ってたけど?昼休みに必ずメールくれるから平気だって。か、な、ら、ず、してるんだ?」
「しちゃ悪いか。俺よりあいつの方が絶対に危険なんやから、そのくらいせんといかんのや」
「そうだね〜。自覚してないけど君よりモテそうだよね」
「なんか朝から腹立ってきた。お前、どっか行け」
「それは無理。授業一緒でしょ」
「・・・・・・・」

そうなんよ。
俺の気のせいでも何でもなくて最近えっらくきれいになってきとる。
実際、かなえちゃんによると「先輩がいなくなったから水月のこと好きっぽい男子がうろちょろしだしてる」らしい。
そんなんあかんやろ。
誰の許可得てる、っちゅうねん。
でもそこら辺はまたしても同じクラスになったかなえちゃんと日吉が上手いこと追っ払ってくれとるらしいんやけど。
それでも心配は心配や。
とにもかくにも本人の自覚が足らへんから。
困ったもんやで。
それで、や。
俺は考えた。
考えに考えた。
ようするに、俺の存在を知らしめればええちゅうことや。
俺はいなくなっとらん、ってな。
それ毎日昼休みを狙ってメールする訳や。
それも雑談やなくて、水月がにっこにこになって大喜びするようなメールをするねん。
何や思う?
それはな・・・


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