Belphegor

現実逃避と切望の境地
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午前4時。
バスルームの扉の音がうるさかったのか、目を覚ましたらしいアヤとふと、目が合う。





「起こした?」


「あ、ち、違います、大丈夫です」





何が大丈夫なんだよって笑って、髪を拭いていたタオルを椅子に掛けてワイシャツの袖に腕を通した。

はっとしたアヤは、きょどってどもって何か言いかけて少し目をそらした。





「彼女さんと、デートですか?あ、でもまだ夜中だし…お仕事ですか?」


「んーまあそんなとこ」





そう、そんなとこ。


こいつにはどこまで話したんだっけ、本当のこと話したら、って思うと怖くて嘘しかつけない。

オレのことどう思ってんの?
自称王子のナルシスト?彼女そっちのけの浮気男?それともただのセフレだとでも。


これだから、職業暗殺者とか、ほんと笑えない。





「ねえベルさん、本当に私ベルさんと一緒にいてもいいんですか?彼女さん怒ったりとか、ケンカになっちゃったりしないんですかね」


「別に。ばれないだろ、そんなヘマしねーし」





あ、そっか。ってへらっと笑うアヤの横顔は儚くて。

だからこうして、手だけ伸ばして体だけの関係だって割り切って、またお前を傷つける。

それでもオレには、
たとえ口約束だとしてもお前を死ぬまで守ってやるって、幸せにしてやるって誓える資格がないから。



信じて。



自信家王子の恋煩い。
マフィアも大変よねってお話。


2012.04.24


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