Belphegor
□見栄っ張り意地っ張り
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「あ、う…ベルさん!」
仕事に向かうという彼の背中に思い切ってぎゅっと抱き着いた。
おー予想外つか珍しいなって、なに?って返事が返ってくる。
こうしたらちょっとでも気が引けるかなって思ったんだけど、らしくもないよね、失敗かな。
「その、次は、いつ会えますかね?」
「んーまーそのうち。また連絡するし」
「あっはい、待ってます」
彼をみると胸がきゅんとして、お気に入りなのは確かなんだけどそれが恋なのかただルックスが好みなだけなのかを自分自身に問う前にベッドインしてしまったことへの罪悪感はこれっぽっちも感じていない。
すれ違う度にこっそり盗み見ていた少し歳上の王子さまみたいな彼になら、全てを預けてもいいかと思えた。少しだけ、怖かったけど。
「ベルさん、お仕事なんでしたっけ?」
「んー接客業?…とも違うか、まあ、結構人生に関わるような」
「えー気になります」
ベルさんには秘密がいっぱい、聞いても上手いことはぐらかされて教えてくれないことがほとんど。
どうしよう、こんな抱き着いていたらどう離れたらいいのか分からない、数分前の自分を恨む。
だけど離れちゃったらなんだか泣いちゃいそうで。
気分転換にとか、健康にもいいとか言いますけどね、実際そんな言い訳考える暇もなくてじわじわ滲んでくるそれをどう対処したらいいのかとかもう、自分でもわけ分かんないんです。
「じゃあな、そろそろ行かねーと」
「あ、す、すみません」
「別に。じゃ、また明日」
ぎゅっと回したはずの両腕はいとも簡単に外されて。
よかった、溢れる前で。
あれ、いま明日って、言いました?明日も会えるんですか?
大丈夫、もう痛くない。
「ねえベルさん、私ベルさんのことが好きなんです、たぶん」
「うん」
「ベルさんには彼女さんがいるって分かってますけど、でも、絶対彼女さんよりお料理とか家事とか上手になりますし、可愛くなってみせますからだからその…これからも、好きでいてもいいですか?」
「お前の期待に応えられなくてもいいんなら、勝手にどうぞ」
3秒待って、予想だにしなかった最高のこたえ。
でも、きっと他にもいる女の子にも同じこと言ってるんだろうなって、逆に彼女さんとはどんな風に話すのかなって考えちゃったらとてつもなく悔しくなっちゃって。
表面張力の限界を知った
決して振り返ることのない背中に恋して。
「現実逃避と切望の境地」のアヤさん視点です。
深夜のテンションと勢いで書き上げたから誤字ありそう、同じこと2回くらい書いてそう。
2012.04.28