dark

□lost 1
1ページ/7ページ

「何作ってるの?」
晶妃はキッチンにひょっこりと顔を出した。
休日のお昼過ぎ、先ほど昼食を食べ終えたばかりだというのに、ダークは何かを作っているらしかった。
「おやつ。」
「え!?おやつ、何?」
ぱっと明るくなった晶妃の顔を見て、ダークはにっこりと微笑む。
「何だと思う?」
材料は…とダークの手元を覗き込むが、全てボールの中で混ざった後だった。
それを型に流し入れ、オーブンにセットした
「焼いて、冷やせば出来上がり。」
「…ケーキ?」
「ああ。」
何のケーキなのかまだ解らないけど、ダークが作る物なら美味しいに決まっている。
にこにことご機嫌な晶妃に気付き、ダークは口元を綻ばせた。
「楽しみにしてくれてるのか?」
「うん!」
それが堪らなく嬉しいダークは目を細める。
「幸せそうだな。」
そう言って晶妃の額をつついた。
「幸せだよー。」
「…それならよかった。」
照れ臭いのを誤魔化すように、ダークは洗い物を始めた。
「手伝うよ!」
晶妃はダークの隣に立ち、食器を拭く為に待ち構えている。
すると玄関から物音が聞こえ、出掛けていたミツルが部屋に入ってきた。
「ただいまー。…お、晶妃が手伝ってるなんて珍しいな。」
「べ、別に珍しくは…。」
「感心、感心…。ん、この匂いは…、」
ミツルは素早くダークへ視線を向けた。
「チーズケーキだな。」
「正解。」
「え!お兄ちゃん、凄い!」
「常識ですよ。…楽しみだなあ〜。」
得意げなミツルへダークは真顔で言った。
「アンタの分は無い。」
「え、何で?」
何故だとまとわりつくミツルをスルーし、片付け終わったダークはエプロンを脱ぎ捨てる。
ふと壁に掛けられた時計を見上げた。
「まだ時間が掛かるから…、」
ちらっと晶妃へ視線を向ける。
途端に嬉しそうな表情になった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ