dark

□lost 7
1ページ/16ページ

特に何のイベントも無い普通の土曜日。
朝早くから出かけて行ったミツルは駅の近くにあるカフェへ向かった。
そこには既に涼が待ち構えている。
三日ほど前にミツルが涼に連絡をして、会う約束を取り付けていたのだった。
遅れてきたミツルが注文したコーヒーが運ばれてくると、黙ったままの涼へ声を掛けた。
「涼くんさ、最近陽一に会った?」
半分ほど減っているコーラを飲みながら、涼はさらっと答える。
「たまに連絡は取ってるよ。」
そしてお互い飲み物を啜っている。
涼とわいわい楽しく会話が出来るとは思っていないので、ミツルは気分を害したりはしない。
…いつもなら。
別の理由でミツルは複雑な心境だった。
それを知ってか知らずか、涼はちらっと視線を上げた。
「会わないの?」
「…うーん。」
ミツルと涼、そしてレモン、この三人はトワの親友である陽一も含めて昔からの友人だった。
しかしここ何年か、ミツルはダークの事もあり疎遠になっている。
だから晶妃とダークがレモンの店を見つけて、ミツルがレモンに会ったのも本当に久しぶりだったのだ。
疎遠であったにも関わらず、レモンと涼は昔と変わっていなかった。きっと陽一も変わっていないのだろう。
そう思っていても、ミツルは陽一に連絡する事が出来なかった。
ミツルは陽一と仲が悪い訳ではない。けれど今は、すごく会いたいという訳にもいかない状況だった。
そして恐らく、ミツルが一人でもやもやしている事に涼は気付いている。
だから今日は口数の少ないミツルへ、涼は言葉を掛ける。
「ダークの事、俺からは話してないから…陽一くんはトワから聞いてるだけじゃないかな。」
ミツルはびくりと肩を震わせる。
どうやら陽一はダークの秘密をまだ知らないようだ。
トワが知らないのだから、涼が話していないなら、陽一はまだ知らない。
トワから聞く、『バイト先の話』に何か思うところはあったとしても。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ