dark

□lost 8
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「本当の事、アイツに教えないのか?」
ダークの唐突な言葉にミツルはぎくりと肩を震わせる。
アイツ、とはトワの事だろう。
あれから晶妃と一緒に帰ってきたダークはいつもの調子に戻っていた。
ダイニングで何か温かいものでも、と三人はココアを飲みながらソファーに並んで座っている。
カップを両手で持ったまま、ミツルはなんでもないような顔をして答える。
「まあ…、陽一の考えてる事も…わからなくはないよ。何も知らない相手にゲームの説明するのも大変だし。」
なにより、ゲームという作られた世界の住人だなんて。
けれど、それはダークも同じ。
ミツルはそれを言葉にはせずに笑顔を向けた。
「明日、陽一に連絡してみようと思ってね。直接、色々聞いてみるよ。それまではダークも、いつも通りにしてもらえると助かるんだけど。」
「…わかった。」
ミツルがそう言うなら、そうしてみよう。
それでも納得のいかないような顔をしているダークを見て、晶妃はくすりと笑みをこぼした。
「ダーク、トワくんの心配してるの?」
「…してない。」
ふん、と鼻を鳴らし、ダークはココアを飲みほした。




次の日、ミツルは宣言通り陽一へ連絡を試みた.。
陽一はすんなり了承してくれて、学校が終わったら会うという約束を取り付けた。

駅の裏にあるハンバーガーショップで、ミツルは向かい側に座る陽一へにっこりと笑いかける。
「さあ、好きなだけお食べ。」
小さなテーブルに置かれたトレーには、とても一人では食べきれないような量のハンバーガーの包みが積まれている。
制服姿の陽一は黙ってそれを見つめていたが、じろりとミツルの顔を見上げた。
「…いらないから、やっぱり帰ってもいいか?」
「またまたー、そんな事言うなよー。」
はっはっは、とミツルは雲行きの怪しい雰囲気を明るく笑い飛ばすが、陽一は更に不安が募る。
「いやだ、何か嫌な予感がする!」
「し、しないって!」
「気持ち悪い!話ってなんだよ!わー!こわい!!」
ちょっと大きくなってしまった声に驚き、ミツルは周囲の目を気にして陽一を宥める。
「ちょっと、静かに!俺をなんだと思ってんの!!」
「暇人だろ。」
真顔で答える陽一を見てミツルはため息を吐き出した。
「冗談きついよ。」
と、まあ挨拶はこのぐらいにしておこう。
ミツルは薄くなってしまった炭酸のジュースを一口飲む。
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