短い夢の中

□短編 オレのものじゃない
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ずっと好きだったんだ。

今更そんな言葉伝えられるはずもねぇのに…

なんでだろうな、すげぇ心が痛いんだよ。



幼馴染のお前と初めて会ったのはアカデミーに入る、ずい分前の話だった。

あの頃からオレの後ろをチョロチョロ走り回っては

いつもすっころんで泣きべそ掻いてたの覚えてるか?

オレが手を差し出せば、泣きながらその手を掴んで、

オレが頭を撫でてやれば、お前はすぐ泣き止んでたな…


そう言えば、よく2人で星見に行ったよな。

流れ星見た!!なんて満面の笑みをオレに向けるお前の顔は今でもずっとオレの脳裏に浮かぶんだ。

会う度に必ずお前はオレの手を取って満足そうに笑ってたな…

その笑顔を見るだけでオレの心は温かくなっていたんだ。

いつの間にか、オレはお前から手を握られる事に期待するようになっちまっていた。


誰から見ても仲の良い友達。

その関係はアカデミーに入っても、下忍になっても変わらなかった。

でも、いつからだろうな…

その笑顔を守れるならオレはどんな事でも出来るって思ったよ。

成長するにつれ、どんどんキレイになっていくお前。

そしていつの間にかオレはお前を女として見ていた。

でも、オレ達の関係は親友。それ以上でもそれ以下でもねぇ。

きっと傍から見れば、兄妹の様にも見られてたのかもしれねぇな。

それでもオレは近くで見守れるなら良いと思っていた。

数回の忍務失敗、数え切れないくらいの怪我をする度に

お前が涙ながらに悔しがってたのを慰めたのはオレだったはずなのによ。

細い肩を震わせ、涙を浮かべる大きな瞳。

それを包み込むのはオレの役目だとばかり思っていた。


ずっとオレの傍にいると思ってた。
そう思いたかったんだ。


でも、その日告げられた内容にその思いは脆くも崩れ落ちていったんだ。

なぁ、オレはちゃんと笑えていたんだろうか…

かっこ悪ぃが、おめでとうと言えた記憶もねぇ

笑顔で手を振りながら去って行くお前を見ながらオレの心は悲鳴を上げていた


今すぐ追いかけてその手を繋ぎ止めたい

でも、繋ぎ止めてはいけない

今すぐ追いかけてその体を抱き締めたい

でも抱き締めてはいけない

最初から、お前はオレのものじゃなかったんだ…

オレのこの思いを叶える時、それはお前の光り輝く未来を壊す時なんだからな。

こんなにも思いばかりが膨らむなんて考えてもいなかった。

こんなにも心が痛くなるなんて思いもしなかった。

お前の笑顔を近くで見たかっただけなのによ…

思いのままに行動出来ていたら、オレ達の未来は少しくらいは変わっていたのだろうか



見上げた空に星は見えなかった。

まるでオレの心を映し出したような空からオレは視線を逸らせないでいた。





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