介入リリカルなのは

□10話 誓い
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高次空間に浮かぶ移動庭園『時の庭園』

その中に空気をさく鋭い音と悲鳴が響き渡る。


「あれだけの好機を前にしてただボーとしてるだけなんて」

プレシアが鞭を片手に持つ前にはボロボロのフェイトがいた。

今回は速人の助けは入らない。
さっきの攻撃で気を失ってしまっている。


「ひどいわフェイト。あなたはそんなに母さんを悲しませたいの?」

プレシアが鞭を振り上げる。
今、その鞭からフェイトを助けてくれる人はいない。

速人も、あの一緒にジュエルシードを封印してくれた白い魔道士の女の子も……

そして再び鞭を振るう音とフェイトの悲鳴が庭園内に響き渡った。

……………………
………………
…………

プレシア・テスタロッサ

元・管理局の魔道士。
しかし、違法な実験をし、失敗。
左遷されたあと、失踪した。

以上がエイミィさんが調べてくれたプレシアについての情報を簡略したもの。

「家族と行方不明になるまでの行動は?」

「その辺のデータはきれいさっぱり抹消されてますね。今本局に問い合わせて調べてもらっています」

「時間はどれくらい?」

「一両日中には、と……」

そこでリンディさんが少し考えるそぶりをみせる。


「あなた達は一休みしておいた方がいいわね」

ジュエルシードはあちら側とこっちで21個すべて回収した。
そして、あちらは今魔力の使い過ぎ動けない状態だ。

リンディさんの判断は妥当だろう。


「特になのはさんはあまり長く休んでもよくないでしょう。一時帰宅を許可します」

「俺もですか?」

「ええ、今のうちにあなたも休んでおきなさい」

俺まで休暇をもらうことになった。
さっきの戦いには参加していないし大して疲労していないのだが、まぁ頭を冷やすのにはちょうどいい。


こうして俺たちは一度海鳴市に帰還することになった。


……………………
………………
…………

場所は再び『時の庭園』
しかし、部屋は変わり、今はプレシア一人がそこにいた。


「たった九つ……。これでも次元震はおこせるけどアルハザードには届かない……!」

そこでプレシアが咳き込む。
口からは吐血。

「あまり時間がないわ。私にも、アリシアにも……!」


ドゴォォオオ!

轟音と共に部屋の扉が粉砕される。

現れたのは、アルフ

アルフはそのままプレシアに襲い掛かる。
一度は障壁に阻まれたものの、力づくで障壁を破りプレシアの胸倉を掴む。


アルフは怒りが限界に達していた。

「あんたはあの子の母親で、あの子はあんたの娘だろう!あんなに頑張ってる子に、あんなに一生懸命な子に……なんであんなに酷い事ができるんだよ!!」


しかし、そんなアルフをプレシアは酷くつまらないものを見るような目で見ていた。


そこに……

ドンッ!

アルフの体が吹き飛ばされる。
プレシアは何もしていない。
アルフを吹き飛ばしたのは……

「なにするんだい、ハヤト!」


全身を包帯で巻かれた速人

速人はプレシアとアルフの間に立ち、無表情のままアルフに向かい合う。


「あの子は使い魔の作り方が下手ね。余分な感情が多すぎる」

「フェイトは……あんたの娘は、あんたに笑って欲しくて、優しいあんたに戻ってほしくてあんなに……!」


頭に血が上り、速人の一撃を防げなかったアルフにもう立ち上がるだけの体力は残っていない。


「ハヤト、その目障りな使い魔を消してしまいなさい」

「……」

速人はなにも言わずアルフに近づき、ポールアームを振りかぶる。


「ハヤ……ト……」

そして、身動きの取れないアルフに


ドガァァアア!

ポールアームを振り下ろした。


「……今度はどういうつもりかしら?」

プレシアが言う。

土煙が晴れて、床に大きな穴が開いていた。


「……目障りなものを消しただけだが?」

速人の一撃はアルフに直撃しなかった。
床を破壊し、アルフはその中におちていった。


「私は始末しろと言ったはずよ」

「言ってねぇ。『消せ』と言われたから『お前の視界から消して』やったんだ」

実にいい加減なトンチだ、と速人自身思う。

しかし、あのまま見過ごしていればアルフはプレシアに殺されていただろう。

そんな夢見の悪いことを見過ごすわけにはいかなかった。

今頃アルフはどこかに転移しているだろう。
死ぬよりは放流したほうがまだマシだ。


「……次はもうないわよ」

プレシアは速人に背を向け去って行った。

速人はその場に倒れこむ。
怪我が治ってないのに暴れすぎた。

しかし、アルフがいなくなってしまってフェイトは大丈夫だろうか?


いいさ、俺が守ってやる
この任務の最後まで俺がフェイトを守ってやる


そう誓いながら速人の意識は再びブラックアウトしていった。


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