記念・特別小説
□一周年記念座談会!
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とある孤島、神崎組隠れ家――
亜熱帯に属するその島は、美しい海に囲まれ、種類・数ともに豊かな植生に囲まれていた。
ピンポーン……
そんな大自然にまったく似合わない機械音。
それはその島で唯一の家の呼び鈴だった。
「……おい、どうなってんだ?」
その家の主、神崎要は愛銃を手入れしていた手を止める。
その表情にはわずかに緊張と警戒の色があった。
「はいはーい、今いくっすよー」
「って待てコラ!」
「ぎゃふっ!」
しかしなんの警戒もなく、犬の尻尾のようなポニーテールをたなびかせて玄関に向かうのは、自称『神崎組切り込み隊長』神崎乱。
要は足を引っ掛け、乱を止める。
「イテェっすよ兄貴!どうしたんすか!?」
「お前は全く疑問に思わないのか?」
盛大にこけて打った鼻を押さえながら乱が要に聞く。
要は乱を起こしながら、呆れたように言う。
「こんな孤島に一般人がくるか?そもそも観光船なんか出てないぞ」
「でもインターホンを鳴らしてたっすよ?」
「だから処理に困るんだけどな……」
この孤島を知っているのは要たちとつながりの濃い数人のみ。
そして少なくともその数人に呼び鈴を鳴らすようなモラルを持った奴はいない。
すると、室内に置いてあった電話が鳴る。
要はビクリと肩を震わせたが、画面に『内線』の文字が出ていたため安心する。
今日、この家にいるのは――
「あら、要?お客様はもう家の中に?」
「歩か……。いいや、まだ出てないぞ」
神崎歩。
名の売れたスパイだが、今日は珍しく隠れ家に帰ってきていた。
「おかしいわね、玄関のカメラには何も映ってないわよ?」
「なに?」
ますます要の警戒が強まる。
知り合いがなにかの思いつきでイタズラを仕掛けてきている可能性もあるが、けっしてそのような楽観論では動かない。
「乱、準備してこい。敵は未知数、とりあえず近接武器とハンドガンを用意しろ」
「……うっす」
乱も要のただならぬ空気を感じて浮かれた調子から変わっていく。
乱からハンドガンを一丁預かった要は慎重に玄関へと向かっていく。
玄関からは侵入された気配はおろか、侵入しようとする様子も感じない。
(外で待ちかまえてるのか?その割には殺気すら感じないんだが……)
要のすぐ後ろにはハンドガンを構えて太刀を腰に差した乱がついてきている。
いつでもこいといった感じだ。
いま傍にいない歩も別でサポートの準備をしているだろう。
準備はオーケー。
最後に乱とアイコンタクトをして勢いよくドアを開いた!
そこには――!
「「要くん、サイト一周年おめでとー!!」」
「……え?」
一周年記念座談会!
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