介入リリカルなのは

□6話 なんか今回俺、カッコよくね?by要
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見ている最中に、これは夢だなと気付く時があるだろう。

今まさにその夢の最中だ。


「よぉ、またやられたらしいな」

風景が何色か分からないような世界。
黒といろんな色がマーブルしているような色だ。

その中で俺の前にいる少年。

その少年を見た時、これは夢だと確信した。


目の前にいたのは

昔の俺。

だいたい一年くらい前の俺だ。


「あの程度のヤツに遅れをとるなんてお前も落ちたもんだな」

昔の俺がやれやれといった様子で今の俺に話しかけてくる。

「うるせぇ。よく負けてたのはお前も一緒だろうが。その癖が残ってんだよ。どうしてくれる?」

夢の中だが口は思いの外よく動く。

昔の俺がニヤリと笑い、目の前から鼻の前くらいに近づいてきた。

寄んな。
俺にショタ趣味はないぞ。


「だったらこの後の展開も癖になってるんだな?」

「……当たり前だろ?お前は俺の何を見てきたんだ?」

俺は超至近距離の自分の顔をまっすぐ見返してやる。

昔の自分に合わせる顔がないほど落ちぶれちゃいない。
負けることは恥じることじゃない。
恥じるべきなのはそこで諦めることだ。
学ばないことだ。

「見ておけ、お前の成長ぶりを」

「ふへへ、期待してるよ?」

昔の俺は楽しそうに笑顔を浮かべながら俺から少し離れる。

俺にはこんなに愛嬌溢れる振る舞いはできない。
どうやら俺の夢のクオリティは低いようだ。


「いや〜、良かった。要お兄ちゃんが相変わらずで安心した!」


…………おい、夢。
なんか俺のキャラがすげぇブレてるぞ。


「おい、俺は男にそんなふうに呼ばれて喜ぶ変態じゃないぞ……!?」

「じゃあ『お兄様』がいい?それとも『おにぃ』?」

昔の俺の像がブレる。
……ああ、なるほど。そういう演出か。

やるじゃないか、俺の夢。


「『お兄様』でも『おにぃ』でもないって言っただろ?俺は……


王子様(ヒーロー)だって」


俺は立ち上がり、すっかり形が変わった像に笑いかける。


「待ってろ、お姫様。必ず迎えにいくから」

「約束だよ?はやく迎えにきてね?」

「ああ、約束だ……






待ってろよ、舞……」



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