誰かの夢

□すれ違い
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兄上は、あれから妙に末の弟に入れ込んでいる

わざわざ僕を使いっぱしりにして、父上に末の弟を育てる許可をとるほどだ
そして、何を考えてか僕と末の弟とを戦わせようとする

末の弟を育てるためですか?

僕は、本当は手加減なしに殺してしまいたいというのに…

兄上はどうして気づいてくれないんですか
僕の意図なんていつも容易に見透かしていたくせに

それとも、兄上に僕が逆らわないと信頼してですか?

僕だって全く逆らわないわけではないのですが…

ああ、兄上のお考えがわからない
でも、一つだけわかることがある

あの男が生きてた頃より僕自身をよけいに見なくなったということです

僕は虚無界にいたのだから元々少なかった
でも、兄上はたまに僕に会いに来てくれた

ただの気まぐれだとわかっていても
一方的に趣味や物質界の話を聞かされるだけだとしても

僕は兄上が僕に笑いかけてくれるだけで嬉しかったのに

兄上は
末の弟にしかあの笑みを見せなくなった

兄上、兄上?
何でそんなになってしまったんですか?
そんなに盲目になったのは、あの男の死のせいですか

イラつく、イラつくイラつく!

あの男はまだ兄上を独占するんだ
僕から兄上を遠ざけるんだ

死んでまで邪魔をするな!

僕はこのイラつきを弟にぶつけることにした
兄上の許可は…
…その時の僕にはもらう余裕なんてなかった

 
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