Short Dream2

□に。
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「う”お”ぉい!帰ったぞぉ!!」

『お帰りー。』



言葉だけ発して雑誌を読み続けてたら、彼は疲れた様子で向かいのソファにドカッと座った。


あら珍しい。

いつもだったら「う”お”ぉい!それだけかぁ!」って怒るのに。

チラリと見てみれば、がっくりと項垂れている。

おお、レアな光景っ。


『どしたのよ、鮫さん。』

「……さすがに4連戦はうぜぇ…」

『4連戦??あー、また挑まれたの?お疲れー。』



100戦連勝を決め、それを山本武に送り、見事2代目剣帝を名乗るようになったスクアーロは、毎日のように変な輩から狙われるようになった。

普通に堂々とした勝負だったら喜んで受けて立つらしいけど、最近のは全部闇討ちみたいなもの。

さすがに神経をずっと張り巡らせているのは疲れるみたい。

でもって、今日は外出中に4回襲撃を受けた、と。


「何でだぁ…普通に来ればいーじゃねーかぁ……」

『え、だって負けたら嫌じゃん。』

「んなもん知るかぁ!!こっちだってそんな簡単に負けねぇぞぉ!!つーかぜってぇ負けねぇ!!」

『はいはい、分かったからボリュームダウンして頂戴。』

「う”……」



雑誌をめくりながら言うと、スクアーロは渋々口を閉ざす。

この部屋のルールは、私なのだ。

何でかって聞かれれば…まぁ、ボスの力を借りてるんだけどね☆



「う”お”ぉい…」

『ん?』


今度は静かに呼びかけて来たから、ちゃんと目を見てあげる。

と、私は気がついた。


『ちょっとスクアーロ、顔はダメでしょ顔は!』

「な、何だぁっ!?」



頬骨の辺りに切り傷が1つ。

折角の美人さんなのに、まったくもう。



『待ってて、薬とガーゼ持って来る。』

「ま、待てぇ!」

『…何よ。』


立ち上がった私の手を掴んで、引き留めるスクアーロ。

何か言いたそうな、言いかけてるような、微妙な表情だ。



『どーしたの?言いたいことがあるならスパッと言う!』

「お、お前は…」

『うん。』


「俺が、好きかぁ…?」


『………は?』




突然の、というか今更過ぎる台詞に思わず素っ頓狂な声を出すと、スクアーロはガバッと抱きついてきた。


『ちょっ…どしたのよ!?キャラ崩壊!!?』

「俺は疲れて帰って来たんだぁ、少しくらい労れぇ。」



あーなるほど、私が雑誌ばっか読んでたから拗ねてたのね。

まったく、可愛い鮫さんなんだから。



『はいはい、ごめんね。』

長い長い髪の毛を撫でて、抱きつき返してあげた。



『大好きよ、スクアーロ。』


言った瞬間にスクアーロの腕の力が強まったのは、照れ隠しだと思っていいのかな?


「お…俺もだぜぇ…///」

『あははっ!』

「な、何で笑うんだぁ!!」

『だってスクアーロ、照れてるんだもん。可愛いなぁって。』

「うるせぇっ!!///」





私の彼は代目剣帝

肩書はカッコいいけれど、実はヘタレで照れ屋な鮫さん




fin.

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