Short Dream2

□よん。
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もし野球の神様ってのがいるなら、答えて欲しい。

あんなに一生懸命好きな野球に打ち込んでた武が…何か悪いことした?
貴方の機嫌を損ねましたか?

ずっとその背中を見て来た私には、今のこの状況は残酷過ぎた。



中学最後の大会、優勝したけど果たせなかった約束……

---「今度はきっと、お前のトコにホームラン打ってやるぜ!!」

---『ホント!?そんなこと出来るの!?』

---「あぁ、一番良く聞こえる声援だからなっ♪」



高校になればまた、野球に打ち込む武を見つめて、たまに笑いかけて貰って……

そんなごくごく普通の幼なじみコンビでいられると思ってたのに。



『どうしたの!?その怪我!』

「ん?あぁ、ちょっとミスっちまってな。大丈夫だから気にすんなよ、なっ!」


スポーツ万能な武が何をミスったのか、その内容は教えて貰えなかった。

いつも武の背中ばかり見ていた私は、武の瞳に何が移ってるのか全く分かっていなかった。

武は、武の瞳は……とうの昔に野球じゃない世界を見ていたのに。




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胸騒ぎがして寝苦しかったある夜、私は風を感じたくて窓を開けた。

と、目に入ったのは道路の向こうから走って来る武。


こんな時間にロードワーク?

そんなワケないってことは、無意識に理解していた。



『武っ…!』

「あり?何で起きてんだ?」

『何処行くの!?』


答えて欲しかったけど、答えて貰えないだろうなって思った。

きっとまた、原因不明の怪我を作りに行ってしまうんだって。



「んー……ダチの為に、全力を尽くしにさ。」



あぁいつの間に彼は、こんなに遠くなってしまったんだろう。


『野球……野球はっ!?また怪我して帰って来るんでしょっ!?危ないんでしょ!?』



危ないなら、野球が出来なくなるなら、行かなくていいよ。

私は、楽しそうにボールを追いかける武が好きなんだよ。

ずっとずっと、白いユニホーム姿で笑う武を見ていたい……


そう、心から想ってるのに。



「……悪ぃ、」


こっちまで胸が痛むような苦笑で、武は言った。



「約束、守れそうにねーんだ…」

『え…?な、何言って……』


聞こえない、聞こえないよ。



「野球より大切なダチが出来て、気付いた。俺には……とっくの昔に野球より大好きな存在があったんだ。」



やめてよ、聞こえない。

最後みたいに言わないで。



「お前が好きだ。だから、ちょっくら守りに行って来る。」




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あれからずっと、武は帰って来ない。

並盛高校はエースを欠いたまま地区大会決勝まで上り詰め、

そして今……



「バッター、4番、田島」


本来武の名字が入るハズの場所には、違う名が。



『ねぇ、どうしてよっ……武っ…』


あの約束とあの日の告白が、私の脳裏にこびりついて離れない。

友達に引っ張られて応援に来たけど、ちゃんとした声援は送れなかった。


もう一度、白いユニホームを着て得意気な笑顔でベースを踏む貴方の姿が、見たい。





番の枠に彼の名は無い

血塗れになった彼が、全てを守る為に戦っているとはつゆ知らず




fin.

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