ショート小説集

□差別
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「お父さぁん」ピピは涙を流し学校から帰ってくると、家の薬局を駆けぬけ、居間へ飛び込んでいった。
 テレビを見てくつろいでいた父にしがみつく。喉をヒクッヒクッと鳴らし、あとは何を言いかけても言葉にならない。
 彼の父パポは息子の頭を撫でながら訊いた。「また、あいつらにやられたのか」
「うん」苦しい息の下から絞り出すようにピピは答える。「なにも悪いことしてないのに、あいつらは僕を」
 喋ることによってイジメられた時の記憶が蘇ったのだろう。ピピは、号泣した。
 そんなピピの様子をしばらく眺めてから、パポは強く唇を噛みしめる。
「ちくしょうめ」かたわらの壁をドン、と殴りつけた。「ゆるせねぇ。ゆるせねぇ」
「ねぇ、お父さん」ぐすんと鼻をすすって、ピピは赤く腫れた目で父の顔を見上げる。「どうして僕らは、こんな酷い仕打ちを受けるの」
「そんな事、知るもんか」パポの表情が険しさを増した。「奴らに聞きたいくらいのもんさ。まともに取り合っちゃ、くれないだろうが」
「お父さんにも、分からないんだ」ピピはがっくりと頭をたれる。
 怒気を含んだ声で、パポは続ける。「かんたんに答えは出せないさ。なんせ、ずっと昔からの対立だ」
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